すさまじい無気力が覆う「底辺校文化」の描写から始まる。九九もできない、授業を聞かないどころかキスしたり抱き合ったり。暴力沙汰は日常茶飯事で、1年たつと半数近くが中退している。学ぶという空気も、将来の希望も皆無な環境で、学ぶ意欲を持つのは普通の人間でも至難の技だろう。
子供自身や親など30人以上のライフヒストリーがつづられているが、どれもドラマになりそうな、悲しく過酷な境遇を生きることを強いられている。子供たちの多くが、親の暴力ないしは無関心による、育児の失敗で家も学校も逃げ出したケース、また夜更かし、居酒屋などでの子連れ飲酒などルーズな生活スタイルを子供に踏襲させてしまったがために、子供がそうした生活を自明のものだと感じ、学校時間に合わせられなくなり、落ちこぼれていくというケースが多い。小学校までに失敗するとまっとうな道に戻るのは難しい。また、高校を中退すると、工場などでのバイトさえ雇ってもらえないなど進路は乏しいにもかからわらず、貧困のため学ぶ時間はなく、働くしかないという現状。さらに彼らは子供時代から一度も関心を持ってくれたことがない。一度落ちたら若者であっても再浮上できない、日本社会の怖さをまざまざと見せつけられるとともに、彼らの生きにくさに悲しさを感じた。
巻末では、子供の学力と親の財力に強い相関があることをデータを元に明らかにする。著者の提案はすぐに賛成できない部分もあるが、普通科中心から職業教育中心に高校教育に転換するという提案は同感だ。上級学校への進学が難しい中、学習への動機づけ強く、一度は社会に放り出された若者たちの職業訓練を受け入れる職業科の増設は必要だと思う。新書という限られたスペースの中、全体を通して、非常によく取材がされており、普段の生活では見えない貧困を目の当たりにさせられる。極めて良質なドキュメンタリーである。