帝銀事件については松本清張『日本の黒い霧』(文春文庫)を読んで知っていたが、本書は真犯人とおぼしき人物にまつわる話にかなりのスペースが割かれており、戦慄をおぼえた。夜中に読むと怖くなって眠れなくなった。
ところがこの作品は、隠れた共著者がいて、その人は佐伯省氏。佐伯氏の体験したことが本書の元となっている。佐伯氏が述べたことを和多田氏が聞き取りをして文章化したものらしい。これが轍寅次郎『追跡・帝銀事件』(晩聲社1981年)となって刊行された。本書の原本の初版である。轍寅次郎は和多田氏のペンネーム。
後に、これの新版が和多田進の単著として『ドキュメント帝銀事件』(晩聲社1994年)として出版された。佐伯氏によると、共著者である佐伯氏にことわりもなく新版が出されたようである。もう一人の著者である佐伯氏の『帝銀事件はこうして終わった』(批評社2001年)との併読が必要である。