ソビエトSFの父、アレクサンドル・ベリヤーエフの原作を母国ソ連のレンフィルムがサスペンスタッチで映画化した作品。
両棲人間や永久パンなど、生物学的なSFで知られるベリヤーエフですが、映画化された本作は飛頭蛮やろくろ首、ペナンガラン等の生首物をSFにて現代に甦らせた佳作となって居ます
ゆったりとしたテンポ、練られた手術・実験室の美術等、欧米の怪奇映画とは異なった独特の雰囲気に包まれて居ます。
生首だけで知識を搾取されるドウエル教授の完全な無力さ、頭と体が別々の個体から移植された美女イブのアイデンティティの危機、顔では無く体つきから死んだ筈の恋人に対する恋慕が甦り苦悩する若者等、ゲテモノ映画では済まされない格調の高さが有ります。
ソ連人が想像で撮った異国(アメリカ南部らしい)を舞台にしながらソ連映画独特の薄青い色調で撮られており、怪奇と医学SF、推理物にガンアクションと盛り沢山な為、何処の国でも無い不思議な感覚で溢れています。
当時のソビエト映画にレイティングが有ったか定かではありませんが僅かですがビキニ姿やヌードの女性も登場し、明らかに大人向けの作品となっております。
全編に流れるハープシコードと木管楽器を用いた哀愁とユーモアが漂うセルゲイ・バネヴィチのテーマ音楽が素晴らしく印象に残ります。
全編を奥歯に物が挟まった様な曖昧な雰囲気が漂っており、現在、当時(1984年)のソ連映画を読み解く解説書が有れば是非読みたいと思いました。
俳優達の見事な演技力とスタッフの丁寧な仕事振りは前記違和感を補って余りあります。
様々な特典(11パターンの字幕入り)が有りますが、本作の解説は無く、スタッフ・キャストのフィルモグラフィーも露・英・仏語の紹介しかないのは残念でした。