本書は、かのヒトラーの生い立ちから始まり、ナチスの終焉までを、膨大な資料から参考に記された優良なものであり、蛮行極まりないナチスの内実が描かれている。
対外侵略や連合国との攻防などはそれほど記述されておらず、主に、ヒトラーが権力掌握をはじめる1933年前後から本格的に始動した「人間絶滅計画」が象徴的な1943年前後の情勢です。
ドイツ国民への煽動、宣伝活動、党各機関の拡大、エリート育成、社会民主党をはじめとする他勢力の完全排除、そして「人種的純粋性」を掲げた悪辣のテロ。これらすべての政策行為は言うまでもなく歪曲した思想、恣意的な理念、ちゃんちゃら可笑しい人格、体制からきたものであるが、本書はそのような事柄を、当時ナチスの様々の機構に就いていた要人の残した文面や発言を引用して、醜悪さを濃くして伝えてるところに特徴がある。
あくまで国内的策略を中心に書かれていて、第二次対戦全体を描いているわけではありません。また、「長いナイフの夜」や「ヒトラー暗殺計画」などの事件に触れてはいるものの、その後の経過や背後、側面(これもやはり関係者の言葉からの引用で)を書いていて、それら事件じたいがどのようなものであったのかは書かれていなく、ちょっと不親切なところがあるため、データベースに書かれている「ナチス問題入門書」とまでは至らないような気がします。しかしながら、当時の実情、完全に狂愚化した国家どうであったのかがありありと伝わってくる資料です。