ドイツ参謀本部に関する通史として多くの読者を獲得した本の邦訳です。訳は極めて平易で読みやすく、一般の読者にも大いに配慮されています。
原著の研究水準は多くの点で既に過去のものとなりつつありますが、逆に各参謀総長に視点をあわせた論述はシンプルかつ明瞭で、この問題に関心を持つものにとって容易に取り掛かることのできるものででしょう。
ただし、問題があることも事実です。翻訳は90年代末ですが、本書の研究の水準は60年代のもので、その後の研究動向の進展はほとんど考慮されていません。特に深刻なのがナチ時代の軍隊に関するところです。本書の内容から第三帝国時代の軍内部の状況を考察する際には鵜呑みにするのは、やめたほうが良いでしょう。
とはいえ、本書はドイツ軍に関する書籍として長く名声を持っていたものであり、この問題に関心があるならば、必ず読む必要があります。その上で、批判点や矛盾点を追及していくべきでしょう。