ページをめくるたびに、まったく新鮮な素材、エピソードが次々に登場し、著者の学識の豊かさに舌を巻く。比較検討に渉猟する各国の神話伝説を列挙すると、バイキングの神話、輪の神オーディン、アーサー王伝説、ケルトとサクソンの神話、ドイツの騎士物語、ニーベルンゲンの歌、ギリシャ・ローマ神話、聖書の伝説、東洋の神話、錬金術師の輪など。
トールキンはこれらの伝説の上に立ち、1つの「指輪」を創造した。だが、これまでの「指輪伝説」がすべて魔力を求める冒険譚であるのに対し、『指輪物語』は魔力の廃棄への旅であるということに、読者は気づくことになる。このトールキンの「指輪」の魔力がもつ象徴的な意味は、読者それぞれに解釈されるだろうが、本書を読むことでその解釈はより深く、より広くなる。そしてこの『指輪物語』が1つの壮大な叙事詩としてファンタジー界に君臨することも納得できるだろう。(祐 静子)
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『指輪物語』自体だけでなく、『指輪物語世界』に対する研究書です。(原作の偉大さを改めて実感しますね。)またこの研究書は、単に原作の中に登場する個別の事柄の出典を云々するのではなく、そのベースとなった物語を多数紹介し、哲学的文化的に掘り下げて、『指輪物語』との関係の底流を考察する物です。単なる『指輪物語の秘密』ではありません。
北欧神話、エッダ、サーガ。ヴァイキングの神話、『ニーベルンゲンの歌』 と『ニーベルングの指輪』。『ローランの歌』や『中世騎士物語』。聖書から錬金術師の伝説、果ては東洋の神話まで。神話や伝説やそれと線の引きがたい古典創作小説を網羅した、興味のある方には面白くてしかたないラインナップではないでしょうか。
丁寧で解りやすく、この手の研究書に有りがちな独りよがりな強引さも、退屈さも感じませんでした。凄く語りの巧い教授の、興味深く、魅力的な講議を聞いているような印象です。
しかも挿し絵は『ロードオブザリング』の美術にも招かれた、『指輪物語』豪華本のイラストレーター、アラン・リー。口絵としてカラーイラストが10枚あまり、鉛筆の緻密なイラストが頁を5~6回めくれば出てくるという贅沢さで、最後まで堪能させました。
しかし、アラン・リーの挿絵が目的の人は、ぜひとも英語版を買ってほしい。なぜなら、日本語版は判が小型であるのに比べ、英語版は大型でアラン・リーの絵を堪能できるからだ。
従って、『指輪物語』の初心者ファンが読むと、圧倒的な情報量に戸惑ってしまうかもしれない。本編の内容についての解説ではなく、ひたすら伝説と神話についていちいちあらすじを全部書いてくれて解説してくれている。とにかく伝説と神話の勉強になる本。『指輪物語』本編を読んで、もととなったものにとても興味が湧いた、という人にはとても向いていると思う。
表紙をはじめ、イラストが超豪華(本編にも挿絵を描き、映画製作にも美術スタッフとして招かれたアラン・リー)なのも嬉しい。贅沢な作りである。
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