歴史、地理、社会、動植物、伝記の5章に分かれ、年表、地図、イラストなども豊富に盛り込まれている。引く事典というより読む事典として、愛好家にとって座右の1冊となるだろう。また、トールキン作品の未読者にとっても、1つの異次元世界の案内書として十分に楽しめる読み物でもある。たとえば「ホビット」の項は、なんと3ページ余にわたり詳細な説明がなされている。
オックスフォード大学で古代中世英語を講じた言語学者トールキンは、彼のつくりあげた世界を神話としてよりも、架空の言語「エルフ語」による資料を集大成した架空の「歴史」としてとらえられることを好んだとされる。構想から執筆は、死の年に至るまでほぼ50年にもわたった。その膨大な時間と労力を費やして練り上げられた神話体系の、細部のひとつひとつを解説し、整理したものが本書だ。世界創生に始まる年代記から数々の名前の命名法に至るまで、一貫性をもたせようと努めた緻密さと、独力で1つの「歴史」を詳細にわたって構築したトールキンの創造力にあらためて驚嘆させられる。(祐 静子)
The maps, genealogies and time-charts, together with the illustrations of characters, places adn events, reveal to the reader the full dramatic sweep and splendor of Tolkien's world. --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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ただ注意しなければならないのは、主要な事項は網羅したものの、『指輪物語』の全部の固有名詞を収録したわけではなく、ちょっとだけしか出てこない脇役(バーリマン・バタバー、サックビル・バギンズなど)や地名(躍る小馬亭、おぼろ谷など)は載っていないことです。地図と年表はありますが、地図の方はなぜか日本語に訳されておらず英語のままです。また、巻末の索引はあくまでも見出し語がトールキンのどの作品のどこに出るかを示すためのものであり、事典のどの頁に載っているかは示していません。そのため、何かを調べようとする時、まずそれが「歴史」「地理」「社会」「動植物」「伝記」のどの部類に属するものかを考えて、それから該当するセクションに開けて五十音順で探すというちょっと面倒な調べ方をしないといけません。あと、事典という性質上、ネタばれの記述(その人物は最後はどうなったかとか)がかなりあるから、小説のほうを一回読み通してから調べた方が良いも知れません。
これを片手に指輪物語を読むのはお勧めしない。よけい混乱するだけである。(というのが私だけだったら御免なさい)なにしろ指輪物語にも出てこない様々なエピソードをここでは解説している事が多いからだ。むしろ指輪物語を読んだあとで、この詳しい歴史を読んだり、映画で描かれる以前の世界である豊富な挿絵を鑑賞するのはとても楽しいものになると思う。
内容は非常に豊富である。「指輪」の「影響」を被り、もはや直る事はない「指輪病」である、と判断されるような人には必帯である。
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