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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
科学の世紀の先駆者,
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レビュー対象商品: トーノ・バンゲイ 上 (岩波文庫 赤 276-4) (文庫)
からくり仕掛けや錬金術の中から科学という普遍的な方法論が現われて、教会による知の体系の独占が終わり、交通と商業と金融の発展が貴族による資産の独占を終わらせた。19世紀英国に起きた変化の中で、召使い頭の息子に生まれた主人公は、大英帝国=世界の中心地ロンドンに出て、合成強壮薬によって大起業家へ、そして飛行機の研究、アフリカで放射性物質の採掘と、時代の先端を走り続ける巡り合わせとなり、自ら近代から現代への変化をドライブする主体であることを意識する。社会構造の変化の中で、社会主義思想と資本家としての意識、階層を越えたいくつかの恋愛体験などにより、内面でも多くの矛盾を抱えることになるが、それでも活動を止めることなく、年月は過ぎ去る。そうして変わりゆく科学、社会制度、人々の精神などを凝縮したものとしての1人の人間を描き、人生を俯瞰して、20世紀の到来を告げた1908年作品。その叫びはさらに複雑化した現代に生きる我々の先駆けであり、ウェルズの示唆した人類の疾走は速度を増し続け、今も我々をさらっていく奔流となっていることが理解させられる。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
現代を予見した名作,
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レビュー対象商品: トーノ・バンゲイ 上 (岩波文庫 赤 276-4) (文庫)
モロー博士の島、タイムマシンを読み、本書を読みましたがウェルズの先見性に感銘を受けました。まずは、トーノ・バンゲイとは、相場で破産寸前になった薬剤師の叔父が起死回生の手段として、うりだした強壮薬で、それがイギリス中で大当たりします。ビジネスの世界にトーノ・バンゲイをひっさげて投機的にうってでる叔父を批判的な目でみる主人公の立場から、大衆の健康不安やコンプレックスに付け込む商売が描かれます。 ここですごいのは、その強壮薬や広告宣伝が、我々が今日目にする栄養剤と全く同じで、これが100年前に書かれた小説とは到底思えないことです。(文中でかかれた広告のいくつかは明らかに現在の某社の栄養ドリンクのCMと同じである。”切ったてになった恐ろしい断崖にぶらさがった登山家とだとか、トラックを走っている競輪の選手だとか・・・そんな絵のついたポスターや広告を配ったものであった” 上巻251項) それらに批判的な主人公も、愛する女性への誘惑から、その商売にどっぷり加担します。 ドタバタに近いビジネスの世界は叔父に象徴され、それを風刺しながらも、それらに巻き込まれる人々をうまく表現しています。 もうひとつ感銘をうけたのは、中年の男性からみた自分の若いときの未熟さへの悔恨と反省がうまくかかれていることです。 もう中年になった主人公の回顧録といった形で小説は進むのですが、 若かりしころの革新思想やアナーキズムへの傾倒、また 制御できない性の衝動に振り回され、理性とはかけ離れた行動をとり、愛への思い込みから、失敗する結婚生活など、 特に40すぎの男性であればほろにがく思える青年期の未熟さへのやりきれない思いなど、おどろくほどうまくかけていると思いました。 ストーリーの中では、地方とロンドンの町や生活の違いと歴史的背景もうまく描かれます。 イギリスですんでいればこの辺もより面白いのだろうと残念に思いました。 本書は現代の広告産業と大衆製薬産業の描写(予言)です。 ちなみにモロー博士の島は遺伝子工学、 タイムマシンは格差社会など、 現代メジャーな問題がテーマで、今読んでも決して古くありません。 最後になりましたが、 上巻の活字体が古くて漢字はかなり 読みづらいです。 1953年初版とあり、現在までたったの4刷ということにも驚きました。 売れてないのでしょうが、このような良書を継続して出版する岩波書店の姿勢もすばらしいと思いました。
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