ここ数年、2冊セットで発売されていた『トンデモ本の世界』シリーズ。今回は単発での発売となりました。前回からさほど間隔が開かず刊行されたのは喜ばしい反面、内容的にはパワーダウンが目立ちます。
理由は単純で、執筆陣の減少が痛い。主要メンバーの志水一夫氏が急逝されてしまったことはもちろん、センスあふれるダジャレでいつも笑わせてくれた植木不等式氏の脱退も惜しい。前回の『U』『V』の際も、得意のダジャレが全く冴えず、挙げ句の果てに突然の「愛国者宣言」など、「うわぁ、この人も『書けなくなったライターのお決まりコース』か?」と危惧しつつも、再起を期待していたのですが……。本当に残念。
おかげで、今回は内容の9割を山本弘氏が執筆しているような有様。当然、内容も山本色が強く、均質化、単色化してしまっています。前回は、お得意の『オタク系』のネタが多かったので、行間にも笑いが詰まっていたのですが、今回は糾弾調というか、筆に力が入りすぎる悪い面が前に出てしまってる(奇しくも、同書で唐沢俊一氏が「オタク評論家の文章が持つ攻撃性」と表現している奴)。
批評が論理的におかしくなっているところも見受けられるし。たとえば、ある本で某メ○ィスト賞作家が批判されているところを、山本氏が批判している部分(ややこしいな)。その本では作家個人への批判として書かれていたはずなのに、いつの間にかメ○ィスト賞作家全体への批判とすり替えられているような……。
ここまで書いておいてアレだけれど、私、山本氏は嫌いではない、というかむしろ好き。知識量は半端ではないし、「どこからこんな物見つけ出すんだ?」といった、「トンデモ系」に対する嗅覚も抜群。今回も、海野十三作品を数多く紹介するなど、本領発揮の部分も少なくない。
とはいえ、同じようなものばかり食べ続けていると、さすがに喰い飽きるというか。『がらくた市』のごとき怪しげな賑々しさがあふれていた昔と違って、今は小さな個人商店になってしまったかのようで、品揃えも偏っていて、がっかり、といったところです。
がんばっているのはよくわかるんですが……。
とはいえ、得る物が全くないわけではありません。今回も、いかにもトンデモ本なのに、中身は至極まっとうな良書『
世界を支配する秘密結社 イルミナティの知られざる真実! (5次元文庫)』を紹介していただいただけでも、ワタシ的には十分元は取れました(ちなみに、これは山本氏ではなく、皆神龍太郎氏の紹介)。
すべからず『書評』の役目とは、「これを読め!」という最高の推薦ですから、ネガティブな意味ではあっても、『と学会』の本はこの役目を十分に果たしています。
過渡期にさしかかった感のある『と学会』ですが、これからも常識的な日常を過ごしている分には、まず触れることのない怪しい書物を、どしどし紹介していっていただきたいものです。
そして、願わくば先人の遺志を継ぐ、新たなライターの登場を期待したいところです。