筆者は米国最大の一般紙「USA Today」でテクノロジー担当をしていた。シリコンバレーを中心とした企業の盛衰をつぶさに見て来た経験から、企業の戦略上必要なことは、「上質」を狙うのか、「手軽さ」を売り物にするのかのいずれかを選択することであると説いている。「上質」は顧客に愛され、「手軽さ」は顧客に必要とされるが、その両方を狙うことは成り立たず、それは「幻影」(ミラージュ)であり、反対にその両方が足りないものは「不毛地帯」にあるとしている。
例えば、ティファニーは長年高級感を売り物にして来たが、一時期廉価な商品で売上を伸ばしたことがあった。しかし、それはブランドの価値を毀損し、長期的には賢明な戦略ではなく、現在は元の「上質」を売り物とする戦略に帰着している。また、ウォルマートは田舎町での買い物の手軽さを売り物に伸ばして来た会社であるが、大都市への進出はそれまでの戦略とは大きく異なり、十分な成果を出すことは出来なかった。これらの事例は、「上質」と「手軽さ」の両方を求めること、あるいは「どっちつかず」は、企業経営をリスクに晒す危険な戦略であり、戦略とは明確にどちらかを選ぶ、或いはどちらかを捨てることである、というのが本書の主張である。