アメリカが太平洋戦争遂行に際し、敵国日本に関する徹底した情報の収集と分析を行っていたことは、断片的に知っていました。
でも、本書に書かれている作戦行動には驚嘆しました。
戦後も長く極秘にされていたトレイシーの資料を丹念に調査し、当時の関係者(アメリカ軍の尋問官や日本軍の捕虜)の証言も盛り込んだ本書は、読みごたえもあり、戦争資料としても上質です。
人の寄りつかぬカリフォルニアの荒野に設置された極秘の捕虜尋問所。
途中の市民に気付かれぬよう、窓のない護送車で深夜に捕虜を移送。
戦闘機パイロットの心を開くためには、真珠湾に停泊中の現役稼働中の空母まで案内して内部まで見せる。
まるで映画のような話ばかり。
しかし、尋問を受けた捕虜たちの苦悶やその後の境遇を知ると、映画みたいなどと言っては不謹慎であると痛感します。
陸海軍の兵士から中将まで幅広い所属・階級の日本人たちの心情が、盗聴の記録という生々しさで、強く伝わります。
陳腐な表現ですが、戦争は人間を残酷に翻弄するものだと改めて思いました。
トレイシーでの活動内容が秘密にされていた理由は「捕虜の会話の盗聴はジュネーブ条約違反」だから。
戦争にあたって、フェアーであることを特に重んじた当時のアメリカの姿勢が窺えます。
最近、『
実録・アメリカ超能力部隊』という本も読みました。
ヴェトナム戦争後のアメリカ軍の心理・諜報戦の変遷の一部を描いた内容です。
同書でも一部紹介されていますし、拷問疑惑や虐待事件で報道されたアフガニスタンでの対テロ戦争やイラク戦争での捕虜への対応に、トレイシーと比べて雲泥の差を感じます。
今のアメリカには、いろんな意味で余裕がないように感じさせられました。
いや、余裕がないのは世界共通なのでしょう。