久々に素晴らしい本に出会った。単にトルコを知ることだけでなく、我々が生きている世界の国々とのかかわり、民族行為の発揚への理解を深めるにも格好の著作だ。訳も見事に読みやすい。
トルコのあるアナトリア半島は3千年前のイーリアス以来、西洋世界にとっては主として脅威としての、様々な影響を西洋世界に及ぼしてきた。ルネッサンス以降の西洋における科学文明とその進歩に基づいた宗教観、世界観の変化、啓蒙主義の登場に対応する力を発展させられなかったイスラム世界はオスマントルコにおいて大きな矛盾を露呈した。それはオスマン帝国の凋落、ひいてはその指導者層の堕落によって国そのものを殆ど失うという危機として現われた。西欧列強はこのトルコの危機を十字軍以来少なくとも千年は続いた「トルコ問題」の解消時期と捉えて狂喜した。この策謀の中心となったロイド・ジョージ、海戦を指揮して敗れたチャーチルはごく現代の存在だ。サリード教授が摘出した西洋の「オリエンタリズム思想」と同根の思いは現在もある。
かつては栄光に包まれた国が分裂して列強の四面楚歌に囲まれながらも、アタチュルクという指導者に恵まれ、彼と同じ熱い思いを持つ人々の献身によって偉大な歴史が作り込まれた一部始終をここに知ることができる。大部な本だがほんの数日で一気に読める。面白い。決して飽きさせない、という以上のものだ。