「トリック卿」なる人物から招待状が届いた縁もゆかりもない6人が雪の館に文字通り「閉じこめられ」、そこで命をかけたクイズに挑戦する・・
という、推理小説としては何とも古風な設定の話。しかし作者は、意図的にそうした装置や小道具を用いて「推理劇場」ともいえる独特の空間を作り出している。
そして話の細かい整合性のために小細工を弄しようとしないことと、そもそも作者の文体が軽妙なことで、使い古された設定が逆に「お約束」のような心地よさに感じる。
トリックに徹底的に整合性を与えようとすると設定が非現実的になり話がおもしろくなくなる、かといって現実に近い設定にすると合理的なトリックが成り立たなくなる、という本格推理小説が本質的にもつ矛盾を気持ちいいほどにつきぬけ、現実性や細かい整合性よりも、純粋に「謎解きの楽しさ」を追求した作品かも。推理クイズ<本書<本格推理 くらいの位置づけか。
緻密な本格推理を期待していたら本書にはがっかりするだろうし、推理小説好きな人ならすぐにトリックが分かってしまうかもしれないけど、軽く本格っぽい雰囲気のあるものを読みたいという人には、それなりに楽しめる1冊だと思う。