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トランスクリティーク――カントとマルクス (岩波現代文庫)
 
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トランスクリティーク――カントとマルクス (岩波現代文庫) [文庫]

柄谷 行人
5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

カントによってマルクスを読み、マルクスによってカントを読む。社会主義の倫理的根源を明らかにし、来るべき社会への実践を構想する本書は、絶えざる「移動」による視差の獲得とそこからなされる批評作業(トランスクリティーク)の見事な実践であり、各界に大きな衝撃を与えた。英語版に基づき改訂。

内容(「BOOK」データベースより)

カントからマルクスを読み、マルクスからカントを読む。移動と視差による批評(トランスクリティーク)によって、社会主義の倫理的=経済的基礎を解明し、資本=ネーション=ステートを超えた社会への実践を構想する。英語版に基づいて改訂した著者の主著の決定版。

登録情報

  • 文庫: 528ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2010/1/16)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4006002335
  • ISBN-13: 978-4006002336
  • 発売日: 2010/1/16
  • 商品の寸法: 15.2 x 11 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By JRX
形式:文庫
ずっと「積ん読」状態で手つかずだった柄谷行人氏の「トランスクリティーク」(2001年)を氏の近著「世界史の構造」(2010年)を読んだ目で読み返しました。

この「トランスクリティーク」で深く掘り下げられたカントについての考察があって、はじめて「世界史の構造」(およびその抄論としての「世界共和国へ」)が成立し得たのだということに思い至りました。そしてこれらの著作を同時代にリアルタイムで読むことの意味を感じました。

今回「トランスクリティーク」を読んで、最も大事なポイントだと思ったことを今日ここに書きます。

一つ目は「単独性」の視点についてです。

それは「類」に属するような「個」を置いたうえで、それらをつなぐ関係性を考察するというような思考に対する批判であり、次のような、ものの捉え方に対する批判としてあらわれる倫理のベクトルのようなものと言えます。

『この一枚の紙と言うとき、すべての紙、どの紙も一枚の紙なのである。私は相変わらずただ一般的なものを語っているだけである。(ヘーゲル「精神現象学」)』

「単独性」の視点とは、言語で定義しようとしてもその外部にこぼれ出てしまうような、あるいは、たとえ固有名をつけたとしても、そうした名称でつなぎとめることができないような、「或る一人の人物」であったり、「或る一匹の犬」であったりするもの、すなわち代替や再現が不可能なものを見据えた上で、それを大切に扱う視点です。

音楽に関係する者同士であれば、空を舞って瞬く間に消えてゆく自分の発した実音を大事に思う気持ちのようなものと言えば、わかっていただけるかもしれません。

こうした、ある意味でミクロな「単独性」の視点が、ひるがえって「普遍性」あるいは「他者」「外部」といった論理につながります。このような「単独性/普遍性」への視点が無ければ「すべての人の同意を要求する(カント)」ような普遍性を追究する精神も生じ得ないと思います。

今日ここに書いていることは、一年前(2011年3月11日)に起きた災害に結びつけたくないと感じています。

しかし同時に次のことが言えると思います。
「単独性」の視点が無ければ、亡くなられた方、傷ついた方、大切なものを喪失された方をいたわる心は持ち得ない。そして、まだこの世に生まれていない未来の人たち、あるいは大昔からこの地で生活を育んでこられた先人の方たちに対する「取り返しのつかないことをした」という気持ちは起こり得ないと。

:::::

二つ目は「理性の公的使用」についてです。

柄谷氏が読み解くカントにおいて、以下のようなインサイトが彫塑されています:

<理性の私的使用とは>
例えばパブリックセクターにおいて公職に就いている人は、自らの立場や利害に沿った意思決定しか行なうことができない。カントの見解に従えば、このような思考の運動(理性の使用)は「理性の私的使用」に他ならない。

これは一般的な通念、すなわち「パブリックセクター=公的な活動」であるという定義を真っ向から否定し、覆すものです。その上でカントは「自分の理性を私的に使用することは、時として著しく制限されてよい」としています。

<理性の公的使用とは>
では「理性の公的使用」とは何か。カントに従えば、例えば個人としての自由な立場から発言したり、世界市民として論文を発表するような活動こそが「理性の公的使用」、すなわちパブリックな活動であるとされます。つまり、そうした一見「私的」な行ないの中に「パブリック」な価値を実現する可能性があるのだと。そして、それは「いつでも自由でなければならない」と、カントは述べています。

(※例えば、戦争を回避するためには:「理性を公的に使用することは、いつでも自由でなければならない」一方、「理性を私的に使用することは、時として著しく制限されてよい」)

こうした既存の価値観を転倒するようなカントのインサイトは、取り返しのつかないほどの環境破壊(原発事故の例を出すまでもなく)が進むと同時に、世界経済の枠組みも大きく揺らぐ中、ひとりひとりの自由な個人にとって何が倫理的に正しい選択なのかを考える上で、非常に重要なことだと思います。

:::::

柄谷氏が「トランスクリティーク」を執筆しはじめた90年代初頭から数えて20年以上の長きにわたる、倫理的要請に立脚した考察は、以下の一節に凝縮されていると思います。

『他者を「目的として扱う」とは、他者を自由な存在として扱うということであり、それは他者の尊厳、すなわち、代替しえない単独性を認めることである。自分が自由な存在であることが、他者を手段にしてしまうことであってはならない。すなわち、カントが普遍的な道徳法則として見出したのは、まさに自由の相互性(互酬性)なのである。』(「世界史の構造」345頁)
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24 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本|Amazonが確認した購入
この本はここ二百年の社会思想を総括すると同時に、今後のあるべき社会の姿を照らし出すと言う意味で、必読、必携の書である。特に、マルクスを扱った後半よりも、前半のカントの部分が、LETS(地域交換取引制度)の持つ可能性を「純」理論的に指し示しているという意味で重要である。そして通読することで、イントロダクションと終章におけるLETSに触れた記述部分の印象が全く変わるだろう。その意味で、この書自体が「視差」(カント)の問題を提示しているのだ。資本の自己増殖に対抗するLETS(=他者とのtranscoding)の可能性は、この書によってはじめてその歴史的意義を明確にされたと言える。満を持して発刊された英語版の原書として、また、DJ的な引用が「作品」を可能にすることを証明した書としても、たとえ今後改稿されたとしてもこの書の持つ歴史的かつ実践的価値は不変だろう。プルードン(=相互主義)の再評価の嚆矢と云う面も思想史的には指摘できるかも知れない。本書はあらゆる矛盾(二律背反)の「間」に立つ現代人にとっての理論的指標であり続けている。
このレビューは参考になりましたか?
29 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By jay
形式:単行本
柄谷行人という名前は前から知っていたが、雑誌への寄稿等で読んだことがあるという程度であった。この本をある偶然から手にして読んだところ、非常に興味深く、かつ興奮させられた。本書は、カントとマルクスに関する論考であり、多くの人はそれだけで興味を失うと思うが、内容は、今のわれわれにとってもきわめて示唆に富む。たとえば、カントの名言’汝および他人の人格を手段としてではなくつねに目的とするようにせよ’というのは、実は、’手段としてのみならず’ということで、カント自身は他人を手段として使うことを容認していた。こういうことで、人によっては、カントをドイツで最初の社会主義者とみなしている。このように、著者の視点は今までの我々が断片的な知識によって得た先入観を覆す常に斬新なものである。

僕が最も興奮させられたのはマルクスに関する部分である。マルクスは資本論等により、資本主義から、社会主義、共産主義にいたる道筋を理論的に定立したというイメージを持っていたが、この本を読んで、その理解の不十分さを認識した。著者によれば、マルクスは国、地域の間で交換をベースとして発展する資本のダイナミズムを実証的、思弁的に分析したのであり、将来に関する予言はしていない。そうした、マルクスの仕事をいわば予言として改変したのはエンゲルスだというのである。こうした歪曲が現在のマルクスの評価にもつながっているのであろう。このように先入観を廃して読めば、マルクスも非常に新鮮なものとなりうるのだ。

この本は、社会とその中で生きる人間についてぜひ薦めたい一冊である。

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