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著者によると、本書は前著「プロダクト管理会計」の全面改訂版とし
て位置づけられる(はじめに)。確かに前著から更に突っ込んだ内容
になっています。そのテ-マは「多くの企業にとってトヨタ生産方式
が何故困難であるのか」で、生産と会計という観点から9章に渡って
論じています。
(所謂管理会計学者の本といえばアメリカの学説紹介が多いですが、
著者は現実の問題点に肉薄しようとする数少ない学者の一人だと思
います。)
ところで、副題「全体最適経営システムの再構築をめざして」が本書
の中で上手く説明されているかというと、少し消化し切れていないと
いうのが、評者の感想です。著者は経営システムの再設計は、1)
志(こころざし)、2)俯瞰、3)深耕だと言います。「海の水」と
「河の水」を例えにして、再設計を論じています。(3章)また
「組織統合度格付け」という独自の観点から経営システムを論じても
います。(4章、74ペ-ジ)
確かにトヨタという最高水準から導かれる経営レベルはそれなりに
説得力があるように見えます。しかしそのレベルと、「生産と会計」
という本書のテ-マが直接結び付けられているかどうかは疑問です。
重要な問題提起ですから、もっと突っ込んだ議論をしても良いと思
います。著者の社会学などに対する洞察は、全体論としては有効か
も知れませんが、経営技術としての管理会計から見ると少し物足り
ないと感じられるでしょう(実務家に推薦できない所以です)
例えば著者は2章生産と会計の統合で「製造業の場合、ABC(活動基
準原価計算)は勧められない」(42ペ-ジ)と指摘しています。何故
製造業ではダメで、非製造業なら良いのでしょうか?折角の重要な指
摘も生きていないように見えます。多くの管理会計学者が所謂ABCを
推奨(参照:「成功する管理会計システム」谷 武幸)している現在
もっと根拠を明確にするべきではないかと思います。
9章では「会計の論理と生産の論理を統合せよ」として、積極的な問
題提起をしています。結論を言うと「増分差額キャッシュフロ-対フ
ルコステイング」(159ペ-ジ)を理解してシステムの再設計に取り組
めと著者は言います。
以上、所謂管理会計論には無い内容が盛り沢山の本書ですから、管理
会計に習熟している人向けの本だと思います。但し重要な問題提起を
含んでいるだけにその論証にもっと取り組むべきだと感じました。
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