日本というとやはりトヨタの存在感は海外では大きく(業界を超えて注目の的ではあるようです)、軽い勉強のつもりで買ったのですがケーススタディである中でも細部に入り込んだり著者の想いを押し付けたりせず、思った以上に分かりやすく、経営一般へのインプリケーションもある本でした。
レクサスという、既に北米で確立していたブランドの遠心力と、一方でトヨタというきわめて強い求心力の綱引きをポジティブな緊張感にし、同一外社内でのブランドの(再)構築という難しい課題にどうやって取り組んだかがコンパクトにまとまっている本でした。
能力構築競争の厳しい自動車業界で後発の高級ブランドを構築する以上、はじめに妥協のない高いところから創めるということや、リーダーとなった方の「名を残そうとは思わない。自分自身の中に達成感があればそれで満足できる。仲間が知っいてくれればそれでいい。」といった姿勢は、ビジョナリーカンパニー2に通ずるものががあるかと思います。「途中で目線を上に軌道修正することは非常に難しい」という言葉が多くを物語っていると思いますが、これは経営だけでなく人生においても当てはまるところが多いと感じています。
人材マネジメントの観点からは、工程が多くにわたる自動車業界において、個人の貢献にまでブレイクダウンするような目標管理ではなく、方針を実行しているかというプロセス管理に舵を振り、主観が混じる評価になるからこそ上司の教育に力を入れるという主張には、非常に納得でした。定量評価も大事ですが、人間の評価を大事にし評価の出来る人間を長期的に育てることに力を入れるというのは、時間が掛かるプロセスですがまさにマネジメントの王道でしょう。
また、「看える化」については、チームとしてどう動くかの示唆が含まれています。1.開示する責任と権限はあくまで担当者にあり、2.問題が発生したら開示し.3.開示されたらチームで対応策を作るというプロセスは、3の有効性を担保するからこそ好循環を生むと捉えるべきでしょう。
組織論としても、長期雇用とあいまいな職域を前提とした有機的な企業の中で、どのレイヤーがどこまでの舵取りをするとうまくバランスが取れるのかという観点から見ても面白いと思います。