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『トニオ・クレーゲル』には、ドストエフスキーの『罪と罰』の中で、金貸しの老婆とともに殺される白痴の女と同じ名前の芸術家リザヴェータ・イヴァーノヴナという登場人物が出てきます。マンは、彼女と主人公トニオのあいだで芸術家とは何かの議論させ、トニオは「迷える俗人」であると彼女に宣言させます。また、『ヴェニスに死す』においては、結果として死に至るとしても、美とともにあろうとする芸術家アシェンバハの姿を描きます。
つまり、両作品に通底するテーマとして、芸術家とは何か、美の源は何か、という問題に対するマンの真摯な思索があるように思います。美や芸術は理屈で理解するものではなく感性で感じとるものであるのに、それを産み出す芸術家は、時には苦痛をも伴う精神的作業や衒学性を要求されてしまう。特に、感性に冷や水を浴びせかねない言語という道具を使って芸術を創りだす作家にその傾向が強い。そんな二律背反に苦悩しながらも、芸術に生きるほか自分の途はないと確信するマンの姿が読み取れます。
訳文がかなり読みづらく、何度読み返しても意味が通じてこない部分があるのが残念です。
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