宮崎駿が散歩の途中等で外から見て惹かれた家を訪問し、家の中と庭の様子、そしてそこに住んだ(でいる)人達の来歴を語るもの。
紹介されている家は中央線沿線の中野から吉祥寺あたりの6軒。
いずれも昭和前半に建てられたものと思われる。古色蒼然としており、当然アルミサッシはない。いずれも庭があり、自然にも恵まれ、其々の個性をもって家と一体になって溶け込んでいるような感がする。
決して豪華ではないが、いずれの家もどことなく風情があるのは何故だろう。住む人の上品さ、良識といったものを感じさせるし、夫婦あるいは家族の毎日の堅実で平和な生活が目に浮かぶようである。
文中の宮崎の表現を借りれば、
“住まいとは、家屋と、庭の植物と、住まう人が、同じ時を持ちながら時間を造りあげる空間なのだ”
“良い家は、良い人を育てる。そして良い家は、見識がつくり、維持する”
“縁側のある暮らし、眺めるべき庭を持つ平安な日々への憧れは、根強く私たちの心に残っている”
“木漏れ日が好きなんです”
“どの木にも、どの草にも、まだ芽を出さぬものへも、すべてご主人との思い出が込められている”
“僕は、子供が育つには、光や暖かさだけでなく、闇や迷宮も要ると考えている”
宮崎の好奇心と繊細さに満ち溢れた文章に加え、宮崎のイラスト、和田久士の写真、そして住人提供の昔の写真も素晴らしい。
この本を読み、写真や絵を眺めると、本当に心身が休まり、心豊かになっていく気がする。