本書はいわゆる経済小説というジャンルにおいて非常に良作であると思う
一般の方たちには難解だと思われる国際金融の世界を人物の背景にまで目を配って上手く描ききっているのが印象的だ
ただ本書はこうした小説としての価値に止まらず、現実の金融業界、ひいては日本企業全体について考えさせられるものでもあると私は思う
一方の主人公である龍花という男の生き様は同情を禁じえないくらい入り込んでしまった
それは国内金融業界の器の狭さが生んだ悲劇のようなもので、現実にも十分有り得るものといえるからだろう
才能があり努力を人一倍する真に優秀な人間が外資に流れる背景がこの龍花という一人の男を通して克明に描かれている点が本書の中でとくに秀逸だと感じた
実は国内企業だの外資系だのと分類すること自体陳腐なことかもしれないが、それでも有能もしくは有能になりうる原石がとくに金融業界において外資に流れる背景には、外資が魅力的ということ以上に国内の金融機関に大きな欠陥がある証左だろう
本書を通じて考えさせられた次第である