トクヴィルの主著『アメリカのデモクラシー』を、特に平等化の側面からわかりやすく解説した本。
サントリー学芸賞受賞も納得の作である。
序章
トクヴィルは、アメリカでは左右を問わずともかくよく引用される人気の思想家である。
しかし、トクヴィルはアメリカをフランスと比較するために持ち出しているという側面があり(トクヴィルはフランス人)、そのためアメリカがよく描かれている場合にはフランス人読者への戦略的意図がある。それを忘れてアメリカ賛美に酔っていてはいけない。
第1章
トクヴィルの生い立ちと、アメリカの旅。そしてそこで受けた衝撃。
アメリカでは、「徳」ではなく「正しく理解された自己利益」によって共和制が実現している。
こうした事情が、『アメリカのデモクラシー』の背景にある。
第2章
「諸条件の平等」は歴史の趨勢である。
不平等な社会にいると、自身の不平等にはなかなか気づかず、むしろ社会が平等になることによって、不平等が顕在化する。そして平等社会での小さな不平等に、人はすごく腹を立てるようになる。
例えばフランス革命は、平等が見えたゆえに、現実の圧制(不平等)に気づき不満を持ったのである。
デモクラシーな社会は、個人を属性では規定できない。
しかし、人はすべてに懐疑的では生きていけない(トクヴィル自身の経験からもそうである)。
そのため、人は「疑うことなく正しいと信じてよいもの」を求めるが、それはときに「多数者の意見という最高権威」へと傾き、「多数の圧制」を招きかねない。
第3章
近年、『アメリカのデモクラシー』はフランスでも注目を集め始めているが、それは米仏の比較への関心の表れでもある。
「平等な自由」を受け入れることで、人は利己的な考えから他者と協調し、秩序が構築される。
アメリカの秩序は、まさにこうした水平的なものであり、垂直的なものではなかった。
アメリカでは、自由と宗教は共存している。
これはヨーロッパでは厳格な政教分離の考えから、自由と宗教が対立しあっているのとは対照的である。
第4章
結社は個と個を結びつける。
それは個が独立したデモクラシーな社会においては異質な存在であり、しかしそれはデモクラシーを相対化するよい契機でもある。
宗教は、デモクラシー下の徹底された懐疑主義的状況を脱するための糸口にもなる。
また、宗教を社会で共有することは、社会にとって重要である。
宗教によって、「多数の圧制」は回避できるかもしれない。
自治と陪審の考え方も、個人を政治に参加させるもので、デモクラシーにおいて重要である。
終章
デモクラシーの危機ははデモクラシーの潜在能力によって乗り越えられるかもしれない。
その糸口として、そしてデモクラシーの未来を切り開くために『アメリカのデモクラシー』は今日でも重要である