阪本順治・・・恐るべし。
こんな映画を作れるなんて一体どんな人間なのか? ただただ呆然するしかない。
あまりにも静かに、あまりにも確実に二人の男が殺し合う。
一方はどこにでもいるありきたりな男、またもう一方も何処にでも居そうな男。
二人の違いと言えば、一方は守るべき家族を持っていることと、もう一方は孤独であり偶然トカレフを手に入れた事だけ。
一体何故こんな事になってしまったのか、それは当の本人達でさえ分かっていないのかもしれない。
正直言うとここまで書いておいてなんだが、私はまだこの映画を完璧に理解しているかとても不安だ。
阪本順治監督は常に独特の匂いを持っている、時にそれはとても難解であり中々分かりづらいときがある。
しかしこの迷路のような映画が次第に登場人物たちの歯車の狂わせて、やりきれない哀切と絶望から自壊した主人公が復讐へ向けてまるで亡霊の足取りのように歩み始めた瞬間
画面に釘付けにされてしまった。
偶然と必然、他のレビューでも書かれていた方が居るが、たしかにそうだと想う。
大藪春彦の「凶銃シリーズ」とまでは行かないが題名でもあり物語のまさに引金ともなる二丁の魔銃「トカレフ」は運命の悪戯のように二人の前に現れる。
前者の「凶銃」では完璧に呪いの様に描かれているがこちらトカレフはあまりにも偶然、かつ必然のように現れる、まさにこれがミソなのだと私は想う。
その連鎖は男と男を結びつけ、やがて凶行へと走らせる。
話は逸れるがスペインの有名な画家ゴヤの作品「黒い絵」の連作の中に「棍棒での決闘」と言うものがある。
それはくすんだ青空と荒野の丘陵をバックに膝まで泥に浸かった二人の男が互いに持った棍棒で死ぬまで殴りあうという構図の恐ろしい絵である。
初めてこの絵を見たとき、あまりにも何の説明も脈絡も無く不気味にただ殺し合う二人の男の絵を見て私は目を奪われてしまった。
あたかも世界が荒廃し、生き残ったたった二人の男が野生を剥き出しにして殺しあうような・・・宇宙的とは言い過ぎかもしれないがまるで避けようも逃げようも無い非業な運命のようだと戦慄を覚えた。
人にはだれか運命の人が居るとよく聞くが、それは単に恋愛どうのの物だけでなく、憎しみと怒りをもって合い間見える「敵」と言うのが居るのかもしれない。
この映画の二人もまるで見えない宿命で繋がれ、最後の決闘では世界が締め出され、たったふたりだけで戦っているかのように感じた。
物語はとても難解で好き嫌いがかなりあると想うが私は自信を持って支持したい。