本作を一言で表せば、親を殺された少女による復讐譚。物語は極めてシンプルで、その分個性的なキャラクターたちによる人間ドラマの色彩が強い。
主人公のマティは、14歳にして父の経営する農場で経理を任されており、その押しの強さ、交渉術も大人顔負け。口の立つ事と言ったら大阪のおばちゃんもビックリ。(笑) あっという間に保安官を雇う経費を捻出し、自分の乗る馬までも手に入れてしまう。
演じる新星ヘイリー・スタインフェルドは、マティ役でいきなりアカデミー賞の助演女優賞ににノミネートされた注目株ですが、基本的にこの話はマティを語り部に、彼女を軸に話が進んで行くので、よく考えるとなんで主演女優賞にノミネートされなかったのか不思議。
そして、ルースター・コグバーンを演じるのがジェフ・ブリッジス。大酒飲みながら、やるときはヤルという保安官。孫ほどの年齢の雇い主を、最初は子ども扱いしつつも、やがて徐々に心を通じ合わせる繊細な演技、平原を駆け抜けながらの馬上の決闘という、西部劇ファンが泣いて喜ぶ見せ場まで、重量級の存在感を見せつけます。
そしてもう一人、テキサス・レンジャーのラビーフを演じるのはマット・ディモン。途中、別行動をとったりして登場場面は多くはないですが脇役として印象深く、しっかり見せ場もあります。
以下、少々ネタバレです。
マティら三人は、紆余曲折の末にチェイニーを含むペッパーの一味と対決し、マティがチェイニーを射殺します。だがその時に、マティは誤って蛇の巣穴に落ち、ガラガラ蛇に噛まれてしまう。圧巻のクライマックスはここから...。
毒が体中にまわる前に、傷ついたマティを医者に診せるために、コグバーンが馬で運ぶ。朦朧とする意識の中で、マティが見たもの。それは彼女の復讐の結果である、平原に横たわるいくつもの死体。
やがて空には降る様な星空が広がり、西部の大自然の美しさと人間のちっぽけさを際立たせ、賛美歌の郷愁を誘うメロディが、情感を盛り上げます。
そして、マティの命を救うために、懸命に走り続けた愛馬リトル・ブラッキーも、遂に力尽きる。瀕死の馬を苦しませないために、コグバーンはマティの目の前で射殺します。復讐の代償としての彼女の痛みを増幅させている。そして、彼女はなんとか命はとりとめますが、片腕を失うことに。
本作は、復讐劇やロードムービーであるだけでなく、奇妙な友情の物語でもあります。しかし、彼ら3人は永遠の友情で結ばれたりしません。それぞれの思いがあり、それぞれの道をそれぞれ生きて行く。そして、感動的な再会劇なんて物も用意されていません...。
今年のアカデミー賞レースでは、本作は10部門のノミネートを受けていながら、残念ながら無冠に終わりました。まぁ、アカデミーが西部劇に冷たいのは昔からだし、さらにリメイク物というハンディも考えれば、仕方ないかも。