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35 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
トゥルー・グリットへの道・第三章「アリスやドロシーのように」,
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レビュー対象商品: トゥルー・グリット スペシャル・エディション [DVD] (DVD)
横断レビューという形で『勇気ある追跡』では、この物語における〈銃〉の位置づけを 原作小説『トゥルー・グリット』では、主人公マティの目から見た世界、細部のリアルな描写について語ってきました。 ジョン・ウェイン版もコーエン版も共通して感じたのは、多少のアレンジは各々あれど、原作小説に対するリスペクトにあふれている、という事。筋の運びはほとんど原作通り。中でもセリフは、両作品とも原作からそのまま使用しているものが多いです。 そして、この映画はコーエン兄弟にとって初の「国民的」映画、と言えるかもしれません。 今回の最大の目玉は主人公の少女・マティを演じる13歳のヘイリー・スタインフェルド。前評判から凄かったですが、確かに本作デビューとは思えない堂々たる演技。数々の映画祭で助演女優賞を受賞したのは頷けます。 「勇気ある追跡」のキム・ダービーは、酒やコーヒーに対する嫌悪感をたびたび表明する、プロテスタント長老派の思想の濃いキャラクターを演じていましたが、本作のマティは「タフ」な部分を強調したキャラクターになっています。「キック・アス」のクロエ・グレース・モリッツにしろ、今年は大人もタジタジの少女たちが活躍する年になりそうです。 ジェフ・ブリッジス演じる鬼保安官ルースター・コグバーンは「うしろめたい」過去を持つ、鬱屈したキャラクターを好演しています。J.ウェインとの違いは、このキャラクターの「弱さ」みたいなところもちゃんと表現しているところ。ラストの4対1の決闘も、単なるカッコ良さというより、いっときマティを幻滅させた事に対する名誉挽回、つまり「意地」を見せた、という感じもするのです。 そして、マット・デイモン演じるラ・ビーフ。いいです。気に入りましたこのラ・ビーフ!アクの強いキャラを、静かに好演。特に後半、舌が半分ちぎれかけ、うまくしゃべれなくなるのですが、それでもしゃべり続けるろれつの回らないセリフ回し、鬼気迫る熱演にこぶしを握り締めました。 このコーエン版の特長は、主人公の少女の「語り」を生かし、より原作に忠実な映画になっている、という事です。また、3人の仲たがいによってチームの集合・離散が描かれ、その中で3者3様の「True Grit」=「真の根性・勇気」が描かれる点がコーエン版の脚色のうまいところだと思いました。 ジョエル・コーエンによると、この映画は「少年少女の冒険談という面白いジャンルに属する」物語だ、とのこと。 父の敵を追って白人の「文明社会」からインディアン居留区という「異界」へ入り込んでいく=コーエン版は、この「異界」としてのインディアン居留区を非常に強く意識して演出しています。全身熊の毛皮を着て、まるでクマが馬に乗ってやって来るように見える奇妙なトレーダーや、樹の梢高く吊るされた腐乱死体など、マティが暮らしていた白人の街からは想像できないような風景の中を旅することになるのです。 これはアメリカ人が愛してやまない『不思議の国のアリス』や『オズの魔法使い』の系譜に属する、少女が異界へ足を踏み込んでゆく冒険譚なのです。もちろんお供はカカシやライオンではなく〔凄腕のガンマン〕なのですが(笑) そしてちょっと驚いたのは、「狩人の夜」で印象的に使われていたあの有名な賛美歌「Leaning on the Everlasting Arms(主の御手に頼る日は)」のアレンジ曲が、冒頭から全篇にわたって流れ、終幕もアイリス・ディメントによるヴォーカルでエンドロールが流れる、という演出。デビューから一貫して、一般の観客にはちょっととっつきにくい、クセのある作風で「神の不在」ともいえるニヒリスティックな物語をスクリーンにぶちまけてきたコーエン兄弟とは思えない手法。ハードな追跡劇も、この曲の効果で詩情あふれる「国民的西部劇」になるのです。 ♪〜 主と共にあらん、この神々しき恍惚 とこしえなる御手に身をゆだね 主の寿ぐこの安らぎは とこしえなる御手の裡に (中略) わが途を照らす、この光のまばゆさ とこしえなる御手に導かれ 何を怖れん、何をためらわん このとこしえなる御手に抱かれ 安らぎは主と共にあらん とこしえなる御手に、わが身ゆだねる限り・・・ 西部開拓時代を象徴する「銃」の暴力と対極にある、道徳や慈愛を象徴する、キリスト教。 映画の前半では、マティという少女の背景にある信仰を、この曲は暗示しているようです。 そしてクライマックス、ガラガラヘビに咬まれて瀕死のマティを、コグバーンは「両腕に抱え」冬の荒野を、おとぎ話のような(「狩人の夜」を思い出す!)星空の下をひた走ります。 映画のラストは、「勇気ある追跡」とは違った展開を見せます。 そこでこの曲は、マティの「想い」へと昇華してゆくのです。 「True Grit」横断レビュー、これにて終幕。
6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
あなたにとってのヒーローは誰?,
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レビュー対象商品: トゥルー・グリット スペシャル・エディション [DVD] (DVD)
語りすぎず,見せすぎず,想像する余地を存分に残してくれる。物足りないと思う場合もあるかも知れませんが,そこは想像力を働かせて楽しめました。神話やおとぎ話じゃなく,万人に対する勇者でもなく,自分にとっての勇者って誰だろう?と考えさせてくれます。 主人公の少女が出会って瞬く間に別れてしまった2人の男性は,確実に少女のその後の人生に大きく影響した「少女だけの」勇者なのだと思います。 ほんのわずかな出会いでも,その後の人生を変えてしまうことがあるんだと思いました。 第三者にとっては役立たずだったり能なしだったり取るに足らない人間でも, 「どこか」で出会う「誰か」にとっては運命(恋愛じゃなくて)の人だったりする。 それが長い人生の中のつかの間の出会いでも。 心の芯が揺さぶられて,以前の自分には戻れなくなるような出会いはそう多くないはず。 でも誰にでも一人は思い当たる人がいるのではないでしょうか。 そして自分も誰かにとっての知られざるトゥルーグリッドなのかも知れないですね。
6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
復讐にはリスクがともなう...,
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レビュー対象商品: トゥルー・グリット スペシャル・エディション [DVD] (DVD)
本作を一言で表せば、親を殺された少女による復讐譚。物語は極めてシンプルで、その分個性的なキャラクターたちによる人間ドラマの色彩が強い。主人公のマティは、14歳にして父の経営する農場で経理を任されており、その押しの強さ、交渉術も大人顔負け。口の立つ事と言ったら大阪のおばちゃんもビックリ。(笑) あっという間に保安官を雇う経費を捻出し、自分の乗る馬までも手に入れてしまう。 演じる新星ヘイリー・スタインフェルドは、マティ役でいきなりアカデミー賞の助演女優賞ににノミネートされた注目株ですが、基本的にこの話はマティを語り部に、彼女を軸に話が進んで行くので、よく考えるとなんで主演女優賞にノミネートされなかったのか不思議。 そして、ルースター・コグバーンを演じるのがジェフ・ブリッジス。大酒飲みながら、やるときはヤルという保安官。孫ほどの年齢の雇い主を、最初は子ども扱いしつつも、やがて徐々に心を通じ合わせる繊細な演技、平原を駆け抜けながらの馬上の決闘という、西部劇ファンが泣いて喜ぶ見せ場まで、重量級の存在感を見せつけます。 そしてもう一人、テキサス・レンジャーのラビーフを演じるのはマット・ディモン。途中、別行動をとったりして登場場面は多くはないですが脇役として印象深く、しっかり見せ場もあります。 以下、少々ネタバレです。 マティら三人は、紆余曲折の末にチェイニーを含むペッパーの一味と対決し、マティがチェイニーを射殺します。だがその時に、マティは誤って蛇の巣穴に落ち、ガラガラ蛇に噛まれてしまう。圧巻のクライマックスはここから...。 毒が体中にまわる前に、傷ついたマティを医者に診せるために、コグバーンが馬で運ぶ。朦朧とする意識の中で、マティが見たもの。それは彼女の復讐の結果である、平原に横たわるいくつもの死体。 やがて空には降る様な星空が広がり、西部の大自然の美しさと人間のちっぽけさを際立たせ、賛美歌の郷愁を誘うメロディが、情感を盛り上げます。 そして、マティの命を救うために、懸命に走り続けた愛馬リトル・ブラッキーも、遂に力尽きる。瀕死の馬を苦しませないために、コグバーンはマティの目の前で射殺します。復讐の代償としての彼女の痛みを増幅させている。そして、彼女はなんとか命はとりとめますが、片腕を失うことに。 本作は、復讐劇やロードムービーであるだけでなく、奇妙な友情の物語でもあります。しかし、彼ら3人は永遠の友情で結ばれたりしません。それぞれの思いがあり、それぞれの道をそれぞれ生きて行く。そして、感動的な再会劇なんて物も用意されていません...。 今年のアカデミー賞レースでは、本作は10部門のノミネートを受けていながら、残念ながら無冠に終わりました。まぁ、アカデミーが西部劇に冷たいのは昔からだし、さらにリメイク物というハンディも考えれば、仕方ないかも。
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