データイーストまさかの第三弾。
僕はそれを知った瞬間予約しましたが、迷われている方もいるのではないでしょうか。例によって初収録作はありませんし、しばしばデコを巡って話題に上る「際物」的なタイトルは(そんなに)含まれていません。しかしこのアルバムには80年代後半から90年代初頭のアーケードゲーム状況が、驚くほどコンパクトに収められているのです。そして、このアルバムに収められているタイトルは、いずれ劣らぬ(そして今でも語り継がれる)佳曲揃いで知られています。
繰り返しますが初収録のタイトルはありません。もはや入手困難ではありますが「ヘビーバレル」「サイコニクス・オスカー」はGMO「データイースト・ゲーム・ミュージック」に収録されていますし、「クルードバスター」「エドワードランディ」「ダークシール」はそれぞれサイトロン1500シリーズにラインナップされていました。
いま聴こうと思ったらけっこう入手困難なものがこうして出ただけでも素晴らしいことですし、「ヘビーバレル」「サイコニクス・オスカー」に関しては、初の2ループ収録がされています。他のタイトルもいつも通り特別なエフェクトがかけられていないので、基板の生音に近い感覚が楽しめます。このシリーズならではですね。
個人的に今回一番期待していた「ヘビーバレル」は、期待を裏切らない収録でした。GMO編集版は実に巧みにまるで一曲であるかのように繋いでいたわけですが、本来はそうではありません。別々の曲です。「ヘビー・バレル・テーマ」は、堂々たるタイトル・チューンの趣ですが、2ループ目冒頭のニュアンスの変化はこのアルバムで初めて聴けるようになりました。「壊滅敵基地」の曲終盤でウェイトが掛かってテンポが揺らぐところなど、まさしくチップが発音している証です(ここはGMO版ではテンポを調整して収録していました)。
一曲が長大な「サイコニクス・オスカー」もきっちり2ループ収録。最終面にふさわしい傑作曲「ラスト・スパーク」も2ループです。
今回のアルバムではボイスの単独トラック化が嬉しい点ですが、「クルードバスター」もボイスのみのトラックとされています。
”冒険百連発”「エドワードランディ」は旧盤と好みが分かれるところでしょうが、オミットされていたクレジット音が収録されていたり、エフェクト抜きという点で元々の音のポテンシャルを実感できます。
「ダークシール」はサイトロンのミニアルバムが名盤の誉れ高いのですが、あれには収録されていなかったヴォイスが今回は単独のトラックとして収められています。旧盤はもちろん探し出してでも聴いていただきたいところですが、今回のアルバムには別の価値がきちんとあります。
それぞれのタイトルを口ずさめる程度にご存知の方ならお気づきと思いますが、今回の収録作の音楽の方向性は見事にばらばらです。ハードロック、ヒップホップ、映画劇伴風、バロック音楽風…。それぞれのタイトルが目指した雰囲気にぴったりマッチした(そして同時に雰囲気を形作った)楽曲群がここには収められています。
当時のアーケードにはさまざまなジャンルのゲームが並んでいました。そういった百花繚乱の中に、デコもまたさまざまなジャンルのタイトルを投入していたことが、音の方から端的に示された選曲であると言えるでしょう。勝ちに行く気迫に満ちた「デコの本気」が垣間見えます。
今回もライナーは「MARO」吉田博昭氏によるものですが、どんな制作現場であったのかを髣髴とさせる実に素敵な文章です(内容については勿体無いので触れません。ぜひ買って読んでください)。その熱のこもった現場で考え抜かれて作り出された音楽たちが、どのようにゲームに寄与したのか…ファンの方ならそれを思い、新たな気持ちでもう一度これらに向かえるはずです。
というわけで、すでに既発盤をお持ちの方はもちろん、あの時代のことを直接には知らない方も、是非。