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デンマークの光と影―福祉社会とネオリベラリズム
 
 

デンマークの光と影―福祉社会とネオリベラリズム [単行本]

鈴木 優美
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

医療界に入り込んだ市場原理、教育に浸透する成果実義、規制緩和、自由選択と自己責任…「世界一幸福な国」は大きく変貌しつつある。高福祉国家に降りかかる、新自由主義の波。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

鈴木 優美
2000年津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。2002年東京大学教育学研究科生涯教育計画研究コース修士課程修了。2002年よりデンマーク、ロスキレ大学心理学・教育学研究科博士課程在籍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 245ページ
  • 出版社: 壱生舎 (2010/12)
  • ISBN-10: 4900028029
  • ISBN-13: 978-4900028029
  • 発売日: 2010/12
  • 商品の寸法: 18.8 x 13.2 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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 この本は、デンマーク在住の筆者が、現地の議論を踏まえながら福祉国家の変容が進む様子を丹念に示したものです。普遍的だった社会保障や社会サービスが、新自由主義的な議論の中で、社会的に排除されやすい人がより周辺へと追いやられやすい制度へと変革されつつあるという本書の指摘は、海外の政策を理想化しがちな日本にとって重要な視点を与えてくれるように思います。また、個人の自立を促す教育や個人の意思を尊重する社会の仕組みが、家庭の問題や民族的なバックグラウンド、加齢による問題を抱える人など、強くあることが難しい人々に不利に働くことがあるという指摘も、考えさせられます。
 なかでも、興味深かったのは、日本でも有名になりつつある、デンマークのフレキシキュリティモデルに関する記述です。柔軟な労働市場とそれを支える充実したセーフティネット、教育保障としての職業訓練を組み合わせたこのモデルは、労使協調の伝統の下で長年積み上げられてきたものであること、一方で多様な主体が異なる認識を重ねがちなためにバランスを取ることが難しいモデルであること、実際、セーフティネットの縮小などにより新たなバランスの模索が進んでいるということは、これまであまりきちんと指摘されてこなかったように思います。こうした「ひりひり」するような本書の内容は、意図的に選択された「影の部分」というより、デンマークの人々が一抹の不安とともに感じている「今の状況」を誠実に切り取った結果なのだろうと思います。
 本書は政策や制度の中身についても詳しく触れています。このように書くと内容が難しそうに感じるかもしれませんが、筆者のスタンスが明確であること、政策や制度の変化が何を意味するのかを「さらり」とまとめる一文が随所にちりばめられていることから、スリリングな小説を読むような感覚で読み通すことも出来ます。デンマークに焦点をあてた本ではありますが、ここで書かれていることは、欧州の福祉国家が共通して直面している問題でもあると思うので、そうした問題を、温度のある議論を通して知りたいという人にもお勧めです。
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21 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By マルチちゅ トップ1000レビュアー
 「世界一幸福な国」と各種調査で注目を浴びた、北欧の小国デンマーク。その国の光と影を、現在の保守政権の政策を追いながら描き出したのが本書です。
 スウェーデンと並んで世界一の公的部門、社会保障支出を誇るデンマーク。学費、医療費は無料、自立して暮らせる高水準の居住環境が保障され、風力発電などの環境政策が先進的で、失業率が低く、経済競争力が高い。近年ではフレキシキュリティという、労働市場の柔軟性と労働者の生活の安全性を両立される労働市場政策で注目を浴びています。
 しかし、90年代以降、この小国にも新自由主義思想が浸透し、また社会民主党政権から保守連立政権へと移行することによって、さまざまな問題が生じています。筆者は雇用情勢-特に若者-の悪化、公共福祉削減とセーフティネットの脆弱化、経済格差の拡大などのマクロの変化から、競争にさらされる教育やアクセスが遠のく医療などの制度、そして肥満の増加や薬物乱用、精神疾患の増大などのミクロの問題まできめ細かくレポートしています。最終章でレポートされているフレキシュキュリティについては、メディアで紹介される割には詳細な実態がわからないので、貴重な資料だといえます。フレキシキュリティを国の制度というよりも、労働組合のイニシアチブを前面に打ち出しているところが鋭いと思いました。
 日本人はデンマークに対して悪いイメージはない。そのことは良いことであるとし、筆者は単純な「バラ色の無理解」から議論のできる理解へと読者を導きます。「世界一幸福な国」がなぜそうなり、そしてこれからどうなろうとしているのか。デンマークの社会を知るにはまたとない1冊です。
このレビューは参考になりましたか?
11 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
デンマーク在住の若手研究者によるデンマーク社会評論といった位置づけかな。
デンマークの新聞をよく読み込んでいる点は確かに評価に値するものの、デンマークの
中道右派政権が進めている数々の政策を「ネオリベラル」的とあっさり切って捨てている
点、「光と影」と言いつつ実際はほとんどが影の部分にしか焦点があてられておらず、
若干バランスを欠いている点はちょっと気になった。また、デンマークで進んでいると
される様々なネオリベラル?な改革内容は日本から見ると、まだまだ手厚い福祉国家だなあ
と思わせる内容であり、これをネオリベと切って捨てるにはちょっと分析が甘いのではないか
と思えた。さりとて、全体としては巷にあふれるデンマーク、北欧べた褒め系の本をいい意味
で相対化する役割があるのかなとも思えたので、星3つを与えることにした。
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