シュールな世界観と、一見現実ばなれしているしているようで妙に人間臭い登場人物達、そこで繰り広げられる追いつめられた人々の「日常生活」を、ブラックユーモアで紡いでいる。「古き良き時代」という言葉を思い出させるような美しい色合いと優しい音楽、細部に渡り凝りに凝った映像で、他のなにものとも比べられない個性的な世界が構築されている。
パリ郊外。失業と食糧危機で、人々は神経をすり減らしながらやっとの思いで生き延びている。そんな中、サーカスのピエロとして人気を博していた青年が、相棒で無二の親友のチンパンジーが食べられ、失業、絶望で意気消沈してやってきたのが、肉屋。薄気味の悪い肉屋のおやじ。清廉潔白でナイーブなその娘と、新しく住み込みの雑用係に雇われた人の良い青年。肉屋の上のアパートメントの住人もバラバラでクセが強い。地下に潜む無政府組織軍団の潔い純粋さが対象をなす。しかも間が抜けていてかわいい。
追いつめられた時に、勝ち残るためなら率先して悪魔にでも魂を売る人間,自ら手を下す度胸は無いが生き残るために妥協する人間,周囲の風潮に抵抗し自らのポリシーを貫こうとする人間。
音や音楽と映像をリズミカルに組み合わせた遊びが素晴らしい。チャップリンの独裁者の床屋のシーンを思い出した。全体的に、子供のような純粋さで、夢中になって箱庭を丹念に作り上げているような、密度の高い出来上がりである。