数十年前の初版をデジタルスキャンして再刊行したもののようで、活字や字体が古く汚く読みにくい。また、初版に収められていた重要ないくつかの図や写真が完全に欠落しているので、まったく意味の通らない箇所が散見される。たとえば図1、図8などは本文で詳細に解説されて重要な意味を持つようなのに、欠落しており、読者としては非常に混乱し失望する。もともと冗長な説明の多い原書なので3200円で購入した読者はどう感じるであろうか。簡潔に述べれば、「デマは受け手の都合のよいように変えられて次に伝えられてゆく」という自明な結論しか得られず、その実験手法にしても小学生の「伝言ゲーム」のレベルであり、社会心理学の実験としても時代遅れのものと言わざるをえない。オルポートの仕事のなかでも決して出色のものとは言いがたい。米国に留学した南博氏の訳文もこなれているとは言いがたく、南氏自身による解題がないのもまことに不思議で残念である。このようなレベルの本をわざわざ復刻する出版社の意図もわからない。せめて十分に校正したものにしない限り故南博氏に対しても失礼なのではないだろうか。