数値ベースで経済的事実を明らかにし、他国や過去の歴史と相対化しようと奮闘する著者による最新作。期待通りの仕上がりだ。
大変細かいことを最初に書くが、過去の本に比べてグラフが見やすくなっている。
従来はWebで発表したカラーのグラフをそのまま転載していたため、モノクロの書籍になったときに判別しにくい場合があった。
著者の本を全て読んでいる訳ではないのだが、どこかの時点で手法を変えたのではないか。
もっと分かりやすくしなくては「日本は何がなんでも破綻する」論者に乗せられている人々が『別の話』に振り向いてくれない、と考えたのかもしれない。
そういった訳で、グラフがモノクロでも読み取りやすくなっている。
細かいことだが、分かりやすくするためのグラフが読み取りにくいのでは、理解寸前の読者を苦しませることになりかねない。こういった変更は大歓迎である。
本書では国富(国の富)について分かりやすく解説しているのだが、個人的には対談パートが非常に楽しめた。
ここでは、「日本は何がなんでも破綻する」論者をドミナント・ストーリーに頭を支配されたストーカーのような方々という表現が出てくる。
対談相手の藤井聡氏は土木工学の健全な発展のために経済学や心理学まで研究しているようだ。その対談で、「日本はダメポ」というシナリオに支配された頭の固い秀才を前述のように評している。
では、どうすればよいか。
ドミナント・ストーリーに対抗するためのオルタナティブ・ストーリーを展開し、普及させていく必要があるという。
このオルタナティブ・ストーリーは「正しい状況認識に基づく正しい方策を取れば、日本はまだまだ発展する」というものだ。要は、従来から筆者が主張している『別の話』である。
少子化でデフレが続くなんて冗談じゃない。世界にはもっと少子化でありながら、高成長を続ける国がある。原因と結果が逆なんじゃないか。デフレが続いて日本の将来に希望が持てないから少子化なのではないか。・・・そういう『別の話』である。
「無駄を削ったのにGDPが増えないのは何故か」というトンデモ議員でも総理が務まるのが日本の強み。
「国債が個人資産を越えたら破綻する」論が出回る中、「国債を増やせば個人資産は増える」というオルタナティブ・ストーリー満載の本書は日本の未来を変えるだろう。