著名なブロガーの方が推薦されていたので読んでみました。
結論から言うと、いろいろと疑問の多い本です。
とくに大きな問題なのは、以下の3点です。
まず第一に、人口の波がデフレの真因であるとするなら、日本と同じ高齢化問題を抱える国は、日本同様に長期デフレに悩まされているはずです。
しかし、ドイツにせよイタリアにせよ、日本のような長期デフレ現象は全く生じていません。著者の説明によれば、人口の波によるデフレはちょっとやそっとの景気対策では改善できないはずですから、こうした諸外国のケースへの説明が必要でしょう。
第二の問題点ですが、著者は、団塊世代が退職するのに伴う労働人口減少に対して、女性の社会進出で対応せよ説きます。
女性の社会進出自体は大賛成ですが、著者の議論の立て方は「オークンの法則」に反しているのではないでしょうか。オークンの法則とは、実質GDP成長率と失業率との間に負の相関関係があるというもの。あっさり言うなら、成長率が下がると失業率が上がるということで、これは我々の日常的な感覚にもぴったりくるものでしょう。
つまり、デフレ下では失業率が高止まりするのですが、にもかかわらず、人口の波デフレだから労働人口の減少を食い止めよという処方箋は、理解に苦しみます。失業率が高止まりしている状況で、そこへ新規労働者を大量導入すればどうなるかは、言うまでもありません。
第3の問題点は、日本人の持つ莫大な金融資産についてです。
日本人の貯蓄好きが行き過ぎ、需要不足=デフレを招いているのは明らかですが、こうした金融資産の多くは高齢者のもので、著者は、高齢者から若者への所得移転を提唱します。
これ自体は望ましい政策ですが、所得移転がデフレ解消の効果的な処方箋かどうかには、大きな疑問があります。つまり、所得移転を受けた若者が、将来の不安から貯蓄としてためこんでしまえば、結局は同じことになってしまうからです。
この問題は、なぜ不況にもかかわらず日本人は貯蓄ばかりするのかという視点が重要になりますが、著者の議論は、高齢者にはもう欲しいものが無いから若者に金を回せというところで停止してしまっているのです。
以上の3つの問題点から見えてくるのは、著者の金融政策の知識が、かなり偏ったものであるのではないかということです。
金融政策は万能ではありませんが、諸外国の例を見るかぎり、高齢化問題とデフレが直結するような拙劣な事態を招いているのは、先進国の中央銀行の中では日銀だけです。しかし、なぜか本書では、日銀に対する批判は的外れと一刀両断され、それ以上の検討はなされません。
仮に、デフレの大きな要因として人口の波を認めるとしても、金融問題を論じる以上、人口の波デフレへの処方箋として日銀の金融運営が出来ることを全く検討しないというのは、なんらかのバイアスがかかっていると考えざるをえません。
したがって、評価は星2つとさせていただきます。