ある日の閉店後の老舗デパートに巻き起こる大騒動。何やらコミカルなモノを感じさせます。
こりゃ、三谷幸喜の映画「有頂天ホテル」みたいなお話なのかな、それとも著者久しぶりのユーモアミステリみたいなテイストになるのかしらん。
購入に逡巡したものの、序章でのかつてのデパートへの郷愁と憧憬が語られるくだりを読んで、このドラマを追う事を決めました。“夢の詰まった空間”、正に幼き日の思い出が甦って来たからです。
そう言えば、装丁からして、レトロっぽくて何やら心弾むじゃありませんか。
様々な登場人物たちが不思議な磁力で引き寄せられ、各々の人間模様と悲喜劇が、サスペンスを織り込みながら進みます。歳月と共に価値観が変わっていく“デパート”への拘りや顧客第一主義への矜持を熱く感じさせます。
ただ残念なのは、登場人物たちにひとりを除いて悪人がいない為、マーク・トゥエイン的世界が作品を支配している様に思える事、予定調和的展開な事、そして個々の物語を説明処理するのに収斂してしまい、ドラマがダイナミックにもスリリングにも盛り上がって行かない事です。ツマラナクはありませんが、正直物足らなさを感じました。
この本の帯の惹句に、名作「ホワイトアウト」を超える緊張感とありますが、悪い冗談。本当にそう思っているの?前作「アマルフィ」が持ち出されていないのがご愛嬌(笑)。