1964年にNHKのFMステレオ放送用にNHK技研と電音が共同開発したベテランなら一度は使ったことがある、あるいは使おうと思ったことのある製品です。
6.5ミル(16.5um)の曲率半径の丸針、アルミ合金のカンチレバー、2.5gというやや重めの針圧で、1970年代後半からのローマス・ハイコンプライアンス全盛時代には「古い、時代遅れ」とも言われましたが、結局21世紀になって最後まで残ったのは基本設計に徹したDL-103でした。
オーケストラの全奏での音の分離が悪く感じたり、レコードによってはバイオリンの艶が不足するように感じることもありますが、50年代〜60年代のジャズでのエネルギー感は「DL-103でなくては」と思わせる部分もあり、トレースの絶対的な安定感、信頼感もあり常用のカートリッジとして使っています。
重いと言われ続けた針圧も、最近発売されるカートリッジが2g以上、場合によっては2.5g以上の針圧を必用とすること、DL-103でレコードを何度もトレースしてもレコードは殆ど痛まないこと、むしろ軽針圧のカートリッジで音をビリつかせてしまうよりもレコードへのダメージが遥かに少ないことから、文字通り「合理的な」設計であったことがわかります。
一見地味なプラスチックの外観ですが、金属ボディよりも共振が少なく、ヘッドシェルとの接触面積を広くとることで必要十分な強度があります。ボディが平行な直線で構成されているためにヘッドシェルにまっすぐ装着していることが容易に確認できますし、ボディ前面中心に引かれた「白の一本線」によって針先位置が容易にわかるだけでなく、レコード盤に針が垂直に降りていることの確認もできるなど、実用に徹した設計であることがわかります。
レコード内周の広域再生に不利であり、特有のピンチ歪が発生する可能性のある丸針を採用していますが、楕円針やラインコンタクト針よりもレコードとの相性が少なく、LPレコード全盛期の1970年代までに録音された音源のLP再生には全く不足感がなく、常用するには最も使いやすいカートリッジだと思います。
最近の超高価格のカートリッジが「ベテラン職人の経験と勘」に頼った設計であるのに対して、NHKと電音の開発チームが総力を挙げて1年以上の時間を費やして開発された「プロ用の本物」とでは製品寿命、品質のバラつきに差があるのはある意味仕方のないことかもしれません。
KENWOODのKP-9010など、ヘッドシェルのコネクタから針先までの位置が51mm~52mmのプレーヤーとの組合せでは
オーディオテクニカ ヘッドシェル [ATLT13A]をLT13A付属のリード線のまま使うのがお勧めです。
DENON DL-103R MC型カートリッジよりもDL-103の方が好みの音質ですので「下手な改良はせずに」現在のまま、長く製造してくれることを望みます。