昨今の経営者は、美しくない。好決算を連発していながら、いかに残
業代を払わずに人を使うかに腐心し、政治的働きかけをして恥じること
がない。そうした中にあって、ライフとワークのバランスを説き、経営
者として実際に成果を残してきた手腕は尊敬できる。
また、成功した経営者の本としては、郡を抜いて、思考に深みがあっ
て論理的であり、その帰結として独創性に満ちている。読んで得るとこ
ろの多い本だ。
しかし、気になる点はある。
なるほど、デッドラインを設ける、集中する時間を創出する、即断即
決、etc…、により効率は高まり処理は高速になるだろう。
だが、処理スピードには、物理的限界があることは言うまでもない。
残業ゼロを実現するには、部下に的確に仕事を割り振りし、その進
行を正確に把握し、適切なデッドラインの設定ができる、「優秀な上
司」の存在が前提だが、そのような人間が存在するのだろうか。
残業をした従業員のいるチームにペナルティまで課せば、大量の仕
事を抱えた従業員が、自宅残業に明け暮れることになるのは、言うま
でもない。
読了後、残業代なしで自宅で仕事をするために、後ろめたい思いをし
ながら、コソコソと、人に見つからぬよう、GmailやUSBメモリで、
持ち出し禁止の仕事用のファイルを持ち出して、自宅で仕事をする従
業員の姿が、思い浮かんで仕方がなかった。