大学の同級生である男女の出会いと別れ、そして再会に、普遍的な人生の営みを重ねた「幽霊の家」。会社を逆恨みする男によって毒を盛られたカレーを社員食堂で食べてしまった女性編集者の心の動きを描いた「おかあさーん!」。小説家の「私」が子ども時代に実家のある街で体験した男の子とのせつなく甘美な時間を回想する「あったかくなんかない」。そして、同じビルに勤める旅の雑誌を編集する男性への5年間の思いを実らせようとする女性の思いをつづった「ともちゃんの幸せ」など、痛苦に満ちた人生の局面にそれぞれのやり方で向かい合う女性主人公の姿が肯定的にとらえられている。
登場人物の多くはネガティブな状況に置かれるが、そうした状況をやみくもに否定せず、ニュートラルにとらえ、「世界」との和解の可能性として提出するよしもとのスタンスは、本作において首尾一貫している。そうした作品集全体の方向性は、よしもと自ら「これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好き」(あとがき)と語る、婚約者から別れを切り出された女性が陥ったデッドエンド(袋小路)的状況の中で掴む「最高の幸せ」の瞬間を描いた表題作「デッドエンドの思い出」に集約している。人生への絶対的な肯定に満ちた短編集である。(榎本正樹) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
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15 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
静かに読める本,
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レビュー対象商品: デッドエンドの思い出 (単行本)
よしもとばななの本はどれを読んでいても感じることですが、全体がとても静かな流れのなかにある感じがします。 美しい日常?っていう感じ。 今回のこの「デッドエンドの思い出」は どの話もなんだか切なくて、とってもいいお話たちでした。 ゆったりとした時間の中で、1人で、ゆっくりと読むことをおすすめします
20 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
今まさにデッドエンドにいる私へ,
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レビュー対象商品: デッドエンドの思い出 (単行本)
本当にいきなり!最愛の恋人と仕事を一度に失って、袋小路で迷って1ヶ月経とうとしている私に、この本が巡って来た。初めに表題になっている『デッドエンドの思い出』を読んだ。 なに!?この癒しは?? ‥涙が止まらなかった。悲しいのでは無く、幸せってどういう感じかを思い出したのだ。 次に『幽霊の家』を読んだ。 別れた彼との縁を、無理に戻そうと願うのはやめようと思えた。 どうなるか分からないけれど、自然に、流れに、身をまかせてみようと思えた。 きっと、今の私もどこかへ、誰かへ繋がっているのだ。 私が大切にしている幸せを同じ様に思ってくれる誰かへ。 ばななさん、ありがとうございます。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
思いでは明日へと続く,
By わこ (東京都杉並区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: デッドエンドの思い出 (文春文庫) (文庫)
私たちの心には沢山の思い出が横たわったいて、そっと掬おうととしても指の間から零れ落ちてしまいます。あなたの手のひらに残ったのは、どんな思い出ですか?宝石のようにきらきら輝く楽しかった思い出?それとも涙が結晶になった悲しい思い出?手のひらに残った思い出も、指の間から零れ落ちた思い出も、すべては今のあなたを形作る大切なものなのです。だから、そっと抱きしめるように抱え込んでください。握り締めようとすると、さらさらと零れ落ちてしまいます。 この本を読むと、自分自身の全ての思い出がいとおしくなります。そして、今自分自身の周りのささやかな幸せを感じられるようになります。心に刺さった小さな氷のような思い出も、やがては解けて未来へ続く河へと流れ出します。早春の陽だまりのような、穏やかで、生命の力強さを感じる一冊です。
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