いまだDVD化されざる漢の映画はいくらでもある。その中でも最もソフト化を望まれる作品のひとつが本作『デス・ハント』。
何しろチャールズ・ブロンソン対リー・マーヴィンである。男として生まれてきたからには、一度は観なくてはならない映画だ!
1931年、北極圏に近いカナダのユーコン地方。氷点下40度の雪原を舞台に、実際に繰り広げられた240キロ・48日間にもわたる壮絶なマンハントを映画化。
マッケンジー川のデルタ地帯に流れついた一人の男、アルバート・ジョンソン(C.ブロンソン)。彼は闘犬を行っていた地元の猟師から、傷ついた犬を救ったことで諍いとなる。逆恨みをした猟師たちはジョンソンを襲撃するが撃退されてしまい、その結果ジョンソンに殺人容疑がかけられる。かつて鬼隊長としてならしたRCMP(Royal Canadian Mounted Police=カナダ騎馬警官隊)のエドガー・ミレン警察部長(L.マーヴィン)は、いまや最盛期を過ぎ、酒に溺れる毎日。そこにアルバート・ジョンソン逮捕の命が下される。
猟師たちとジョンソンの丸太小屋を包囲するミレン。激しい銃撃戦が繰り広げられ、荒くれ猟師たちは次々とジョンソンに撃ち倒されてゆく。
ミレンはダイナマイトで丸太小屋を爆破。しかし、ジョンソンは退避壕に潜んで見事回避、雪原へと逃避行を開始する。ミレンは新任警官のアルビン(アンドリュー・スティーブンス)と黒人のベテラン、サンドッグ(カール・ウェザース)と共に長い長い追跡行を開始する。
自由を守るために逃走する一匹狼と、男としての意地を賭けて追撃するミレン。スコープごしに目と目が交わった瞬間、両者はお互いを真の男として認め合う。共鳴する魂と魂が、白銀の世界に火花を散らす ― 。
『女王陛下の007』のピーター・ハント監督が、雪原に展開するハードな追跡劇と、男の世界を実に味わい深く演出。ブロンソンとマーヴィンの相譲らぬ魅力を描ききった、文句なしの傑作アクションである。そして、実に粋なラストにニヤリとさせられてしまう。
さて、誰しも気になるのは、この映画で描かれている物語がどこまでが実話なのか、という事だ。日本では全くといっていいほど知られていないため、元となった実話の日本語でのデータベースはネット上で見られないが、アメリカとカナダでは、アルバート・ジョンソンはそこそこ知られた犯罪者らしい。英語版ウィキペディアから一部要約するが、実話は映画からはかけ離れた、「ラット・リバーのイカレた罠師」と呼ばれた犯罪者の事件で、そこには男のロマンは存在しない。なので興ざめしたくない方は、以下を読むことはお薦めしない。興味のある方のみお読み頂きたい。
1931年7月9日、カナダ北方のフォート・マクファーソンに流れ着いたアルバート・ジョンソンに、RCMPのエドガー・ミレン巡査(実在のミレンは若者だった)が職務質問し、その際、ジョンソンの発音から北欧系だという印象をもったという。ジョンソンはマッケンジー・デルタにあるラット・リバーの土手にキャビンを建てて暮らすようになる。しかしジョンソンは狩猟のライセンスを持っていなかった。
しばらくして、地元の猟師から、仕掛けた罠が何者かの手によって壊されるなどの被害が訴えられるようになり、ジョンソンに容疑がかけられる。12月26日、2名の巡査が令状を手にジョンソンの小屋を捜索しようとするが、ジョンソンは発砲し、1人の巡査が負傷。やがて9人の警官隊によって小屋が包囲され、銃撃戦の末に爆破、ジョンソンは退避壕でこれをかわし、ブリザードに乗じて雪原へ逃れ出る。警官隊は一度はジョンソンを追い詰めるものの銃撃戦となり、エドガー・ミレン巡査は凶弾に斃れる(!)。ジョンソンはユーコンを離れる事を決意し、追跡隊の裏をかきながら逃避行を続ける。カリブーの群れの後を追う事で巧みに足跡を隠し、追跡隊を煙に巻くなどの行動は、映画の中でも描写されている。ジョンソンを見失ったカナダ騎馬警官隊は、ブッシュ・パイロット(滑走路のない極地で飛行機を離着陸させ、人命救助などに携わる飛行士)のウォップ・メイ(映画ではカナダ空軍パイロットのハンク・タッカーに改変)を雇って上空から捜索。ようやくジョンソンは発見され、追撃した警官隊との銃撃戦の末、射殺。1932年2月17日、イーグルリバーの近くでの出来事だった。
この事件のあと、アルバート・ジョンソンについて、カナダ及びアメリカで調査がなされたが、結局彼の身元と実名は判らなかったという。
ジョンソンの正体が誰だったのか、その後も多くの作家やジャーナリスト、ドキュメンタリー番組などにより仮説がたてられ、第一次大戦の徴兵忌避者といった推測もなされたらしい。DNA調査までされ、北欧系もしくはアメリカ中西部のコーンベルト地帯の出身者ではないかといわれ、死亡時の年齢は30歳と推測されている。
ディスカバリーチャンネルでも、ジョンソンの正体を検証する番組を制作したという。DVD化のあかつきには、そうしたドキュメンタリーを特典で入れるのも興味深いかもしれない。
何はともあれ、乞うDVD化!