クーロン黒沢氏による新たなドキュメンタリーシリーズ。
日本を舞台に、ファイル共有、ペドものダウンロード、そして電話ハックに命をかける三人の男の姿を生々しく捉えている。
三者三様の特異な生活実態と証言はいずれも衝撃的かつ爆笑ものなのだが、中でも一番の有名人であろう電話ハックの達人、ミスターpbxの豊富な経験談は特に面白く、引き込まれる。
黒沢氏とミスターpbxがイリジウム衛星携帯電話を片手に夜の秋葉原を徘徊し、80年代〜90年代の電脳関係の名所旧跡を紹介するくだりは、「マーズマーケティングカンパニー」「パイナップル」「タイゲン貿易」などと聞いて眉が吊り上がるような化石人間には懐かしさ炸裂の名場面である(私は目頭が熱くなった)。
だが、この作品の面白さはそうした、懐古趣味的なIT話やマニアック自慢に終わるものではない。
池袋の薄汚いアパートに集積される大量のデータ、市民運動に揺れる渋谷区宮下公園で安全に入手される非合法ファイル、自作デバイスによって無料接続される公衆電話、地球の裏側からもたらされる無限の情報空間へのアカウント。
彼らの武勇伝に耳を傾けていると、そのうちにふと、退屈な日常の世界と思っていたこの場所、自分が今いる場所が、突如としてまるで馴染みの無い異世界に変わってしまったような、心地よい不安感に襲われるのである。
登場する三人、そして黒沢氏がやっているのは、つまり日常を冒険の舞台に変換する行為だ。
DJ北林シリーズに登場する外こもりの人々は東南アジアに向かう事で日常の殻を打ち破った訳だが、本作に紹介されているのは知識と熱意、そして世界を斜めに見る視点によってそれを成し遂げる方法なのだと思う。
中盤に置かれた、ミスターpbxの車で夜の東京を走る場面は印象的だ。
そこに映し出される風景は、私の見知った同じ街とはまるで違った魅力をたたえていた。
続巻を楽しみに待ちたい。