先ず、本著では、元々「和製英語」であった“digital archives”のカタカナ表記を、「デジタル・アーカイブズ」とせずに「デジタル・アーカイブ」としているが、これは一般的な日本語表現に従っただけであり、特段他意はない。よって以下、当書の表記に準じたい。さて、本書ではデジタル・アーカイブを進めている博物館や美術館、図書館や文書館の事例と現況なども、手法や運用、ブランディングや法理論面の課題等と併せて紹介している。その中で、1995年に開設した沖縄県公文書館についての著者の見解をみてみたい。
沖縄県公文書館は、『
アーカイブズへの眼』(2007年)を著した大濱徹也・筑波大学名誉教授が、ワシントンに駐在員まで派遣して琉球政府時代の記録収集などを行ってきていた同公文書館を「国内の各種の公文書館や文書館のなかで最も優れた活動をしているアーカイブズ」(前掲書pp.126~127)と高く評価しているところだ。本書の著者も、同公文書館は「県立公文書館として明確なスタイル」を有しており、「他の地域の公文書館に対して、今後こうあるべきという訴えが聞こえてくるようだ」(本書p.67)との見方を示し、やはり高いポイントを与えている。
米国国立公文書館から収集した貴重な記録資料等を保蔵する沖縄県公文書館であるけれど、そこには「将来世代への責任(responsibility)」(富永一也氏「演繹的公文書館論」参照)といった《哲学》が脈打っていると考えるが、もう一つ見逃せないのがデジタル・アーカイブとしての取組であろう。実は、同公文書館の特長として、他では国立公文書館しかないらしいISAD(G)(General International Standard Archival Description,1994〔国際標準記録史料記述(定義集)〕)を取り入れた検索システムを導入していることだ。
このシステムは、「フォンド(組織)−〔サブ・フォンド〕−シリーズ(事務分掌・主題)−ファイル(資料1点)−アイテム(件名)」といった「目録」の構成となっており、現下では最も優れた「群」による「階層検索」システムである。「デジタル・アーカイブ」構想は、これからの博物館や美術館、図書館や文書館などの方向性をある程度決定付けるものであり、向後の一層の議論と技術の発展を期待したい。なお、著者の笠羽晴夫氏は、デジタルアーカイブ推進協議会(JDAA)の事務局長を務め、その事業推進に当たられてきた、この方面の第一人者といってよいだろう。