著者の言うデジタルな生活とは、ITツールとネット空間の情報を活かした生活だそうです。それは、わが国では1979年から始まったそうです。その年にITツールとしての、マイコン家電・携帯電話・パソコンの実用品普及販売が始まり、またインターネット・パソコンにより今までの生活空間とは違う新たなネット空間が作られ始めた年とのことです。
それから現在まで25年間、このIT化の飛躍的な発展と、それに伴う我々の生活の変貌とそこにいる住人の意識変化を、本書は丁寧に追っています。分かりやすく書かれていて工学系でなくても、気楽に読めます。コラム欄でITの基本的説明があり、勉強になります。
一時表層文化論と称して、社会現象の上辺の現象のみを注視し、深部にはあえて立ち入らない評論が流行りました。この言い方で言えば、本書の対象は、社会の表面だけではありません。リアルな社会とバーチャルなネット社会との間、喩えて言えば社会の表皮とその上に作られた人工皮膜との間に立って両者を観察して記述するという難しいことをやっています。
僕には、その中でも、リアルな自分がネット上に情報発信している時に、ネット世界に送り出した仮の自分、化身と著者は名付けていますが、その動きの記述は面白く、大変興味が惹かれました。次世代の自我論は、この化身論抜きには語れなくなると思います。
著者によると次は、ケータイの時代だそうです。僕のような目も悪く不器用な者には、ケータイのツールデザイナーが、画面は大きく、しかし携帯しやすいハードを具象化して製品化してくれれば大いに助かるなと思いました。