この作品には、派手なアクションもラブロマンスも度肝を抜くようなCGもありません。(失礼ながら)客を呼べる美男美女も登場してません。そのせいか巷の人気は残念ながら低いようですが、間違いなく人類の映画史上最高級の傑作です。少なくともマイベスト映画として文句なしに推薦します。
ワルシャワ郊外のどこにでもありそうな団地の住人達を主人公に、十話の珠玉の物語が紡がれていきます。どの物語も1話完結(約1時間)なのですが、それぞれの主人公が別の物語に顔を出していたり、ほとんどの物語に登場する「運命の男」の視線が、すべての物語を緊密に結びつけ、奥行きと重層性を与えています。ある物語に登場するハエなどは、運命の必然と映画の奇跡を感じさせてくれました。大学の教授もオーケストラの団員も、郵便局員もタクシードライバーも、すべての主人公が切なく輝いて胸に刻まれるはず。
その代わり、安易なハッピーエンドやスカッと爽快ハリウッド的な結末は望まない方がよいでしょう。もっと深く余韻に満ちて、人生の重みを味わいましょう。
もう少し人当たりのいいキェシロフスキ監督の入門作品としては、イレーヌ・ジャコブが可憐な「ふたりのベロニカ」やジュリー・デルピーがかわいい「トリコロール−白の愛−」あたりをお薦めします。