「「私」が考えている」ことは間違いないとしても、そこから実体的な「私」が存在するということは必ずしも帰結しない。デカルトの「我思う⇒我在り」の推論には飛躍があり、欠落した部分を補足しなくてはならないとフッサールは考えます。そこで、フッサールは、最も原初的な「(考えるという作用が現れる)意識の生」の精密な分析を進めることで「我」の意味を解明して、それと相関する対象世界の緻密な構成を進めることで、デカルトの限界を超えて、デカルトが求めた確実な知の基盤を再構築しようとします。
しかし、「考える我」だけでは、やはり限界があるのでしょう。そこから、フッサールは最晩年の著作「ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学」で生活世界に決定的な意義を認めることになります。
本書は、フッサールの中期の主著「イデーンI」と最晩年の主著「ヨーロッパ諸学の危機と超越論現象学」の間を埋める大変貴重な資料と言えます。しかも、二つの著作よりずっと読みやすい。イデーンを読んだがさっぱり分からなかったという読者は、本書を読んでから、再挑戦されることをお勧めします。また「危機」を読む前に本書を読んでおくと大変に役立ちます。
フッサールに興味を持つ人は是非ご一読を。