文庫本を4冊まとめてイッキに読み切った。
超人的な主人公の活躍とど派手なストーリー展開で、韓国歴史ドラマをみている感じだった。
少なくとも、読者をグイグイ引き込むパワーは十分ある。
しかし、もう一度読み返すことはないだろう。
ステロタイプのキャラクターの心理描写が非常に甘く、感情移入がイマイチできない。
加えて、時代考証がお粗末なため、その時点で興ざめしてしまうのである。
一例をあげると、本巻の敵役徐丁垓であるが、主人公は清国の役人に彼が太監と紹介される。主人公は役人から彼が宦官と補足説明を受けるまで、彼が宦官と認識できなかった。しかし、「太監」という官位は宦官だけのものであり、清国の冊封体制下の琉球の政策担当者が、それを知らないということは100%あり得ない。また、太監とは宦官の最高位であり、そこから失脚した人間が琉球に飛ばされるということもまず考えられない。皇帝のプライベートを全て知る人間が失脚した場合、待ち受けているのは、良くて幽閉、最悪暗殺や処刑である。
伝奇小説の雄山田風太郎の作品は、ストーリーは荒唐無稽だが、その実綿密な時代考証と医学の知識に裏打ちされたリアリティがあり、読み手の興味を削ぐことはなかった。本作は素晴らしい点も多いのだが、ディテールの甘さが作品の価値を大きく損ねていることが、とても残念である。