一種の自分史であると共に、テロ爆弾の歴史研究書である。全体から著者のバクダン製造技術の継承者かつパイオニアとしての高い矜持が感じられる。
冒頭の三菱重工ビル爆破事件から書き起こすあたりは巧妙である。バクダン製造の過程で知り合う人物の素性をめぐってミステリ仕立ての告白本の体裁を採っているところも含めて本としては非常に良くできている。
主となる舞台は昭和二十年代中盤で、まだ戦後を引きずっており隔世の感がある。そこが今読むとフィクション風に感じられる理由なのだが、冷静に読むとかなり危険な橋を渡っている。製造した爆弾での戦果が出なかったことは幸いである。
なお本書では、著者も書いているとおり、バクダン構造の技術論には踏み込んでも定量的なデータは全くなく、バクダン製造やテロを礼賛する物ではない。著者の科学的探求心と勇気に敬服する一冊である。