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古代ギリシャから原始キリスト教、中世異端派、フランス革命、モスクワ裁判、ポル・ポト、連合赤軍、ドストエフスキーやサルトル、三島はもちろんのこと、二葉亭四迷まで。
素人の私は、笠井氏が通り抜けてきた、これらありとあらゆる観念の悲劇についての徹底した考察の前に、もはやコメントなど仕様もなく呆然と立ちすくむだけです。
専門家なら、一つ一つの事象について、そこは違う、あそこは解釈が間違っている、などと意見もいえましょうが、私は特にそのようなことに興味はありません。ただ、読み終わって感じたことは、人間は自然をそのまま受け入れて生きていけるほど頭脳が下等にはできていないし、この世に新たな秩序、幸福をもたらしたものの多くが仮定、ないしは観念から生まれたことも否定できない。ところが、その観念がこれほどまでに人間を苦しめるものにもなりうるとは。
一番悲しいことは、テロや、観念の毒気に染まっていく人達には、笠井氏の言葉が決して届かないと言うことです。宗教の力で全人類が救える、と単純に考えている人々もそうです。(あえて言いますが)心ある人々は、観念と現実の軋轢から起こる悲劇を最小限の被害ですむように、無言の努力を継続していくしかない。本当に今のところそれしかないようです。
とにかくこの論考で、人間がなぜ観念の狂気に踊らされるのか、という基本的な構造は明らかにされました。願わくば、今世紀は人間が人間自身にもっと本当の意味で思いやりを持てる時代になってくれることを期待します。こんなことを考えさてくれる学術書などめったにないでしょう。
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