いろんな方々のレビューを読んでいて、なるほど、自分が感激した作品についても、人によって様々に意見が異なるんだなあと、今さらながら感心しています。今頃何言ってんだと言われれば、スミマセンと申し上げるほかありませんが。
ただ、娯楽ものとしてのフィクションに対し、リアリティがないだのご都合主義だのという批判は的外れではないのかなあ。SFだってミステリーだって、それを言い出したらそもそも娯楽ではなくなってしまうように思います。カッコよすぎる魅力的な登場人物が、スカしたキザなセリフを述べる。いいじゃないですか。歌舞伎だって、あの隈取り、衣装、セリフ回し、どれ一つとってもおよそリアリティとはかけ離れたものではありませんか。ファンは歌舞伎独特の様式美に酔いしれているのです。リアリティの追求なんて求めてはいないはず。
そう、様式美。藤原作品にも独特の様式美があって、一つの閉じた作品世界の中では、何もかもが美しい。登場人物の一人ひとりが、悪人も含めてすべて美しい。読んでいて気持ちがいい。ミステリーとしての完成度うんぬんについては批判があってしかるべきでしょうけれど、私などは少々の瑕疵などどうでもよろしい、この様式美のもたらしてくれる気持ちよさの前では何でも許しちゃう、という姿勢で楽しんでいます。
それにしても、あまりにも早く天に召されてしまいましたね。残念。残念です。心よりご冥福をお祈り申し上げます。