テレサ・テンのように「アジアの歌姫」と評価される歌手を日本での活動だけで見てしまうと過小評価になると思います。
この2枚組のアルバムのラストに収録されている「我的家在山的那一辺(私の家は山の向こう)」は、1989年5月27日の香港ハッピー・ヴァレー競馬場でのライヴ音源です。あの天安門事件直前のテレサの感情と行動を如実に感じることができる歴史的な歌声がこれです。感情のほとばしりが伝わる感動的な歌唱でした。
格調高く歌い上げる台湾出身のテレサにとって、父母の祖国中国への思いは複雑だったと思います。なおリーフレットには発音と意味も掲載されています。
有名な「夜來香」や「何日君再來」のような中国語の伸びのある歌唱を聴くと、アジアの人々が、テレサに感じていた熱い思いが良く伝わってきます。中国語での「償還(つぐない)」も興味深く聴きました。
「時の流れに身をまかせ」「つぐない」は名曲ですね。秘めた感情をしっとりと丁寧に歌い上げるその歌声は、様々な世代や性別を超えて愛されてきました。
「別れの予感」は、悲しい曲なのにどこか明るさを感じさせる不思議な曲に仕上がっています。可愛くて素直な気持ちを表わした女性の歌です。しっとりと情緒的で、どこか哀しげに歌えるのはテレサしかいないと思います。