最初の章「なぜ通信産業はメルトダウンしたのか?」は、2001年春に米国で起こった通信事業者の相次ぐ破綻・経営危機を、政策の失敗と断罪するコラムを集めた。自由競争による調整を過信する、米国の政策に疑問を投げかける。投資額の割に利幅が少ない通信産業に、過当競争を持ち込んだ結果、品質低下と雇用機会の減少を招いたとする。
「独占は本当に悪なのか」と題する章は、IT企業に対する規制政策の迷走を描く。企業合併に対する、米政府の無理解を批判。さらにマイクロソフト裁判における政府の正当性を否定する。
このほか、電波規制や知的財産権の過剰な保護、デジタル・デバイドなどのテーマを扱う。各コラムの冒頭に、日本の読者向けの要約が付いており読みやすい。
(日経コンピュータ 2005/03/21 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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冒頭の論評「テレコム・メルトダウン」で、ノームは、独占事業であった情報通信産業に、過度の競争原理を導入した為に、供給過剰に陥り低価格になってITバブルが崩壊し脆弱化した。この産業には、協力的カルテル、特定市場の少数独占は必要だと、自由競争を旨とする既成経済学に挑戦を挑む。
独占は本当に悪なのか?ドットコム企業の独占、反トラスト法違反、マイクロソフト叩きは間違いだ、等など、全編に亘ってテレコム産業の競争原理と発展について論陣を張る。
一方、経済社会発展の原動力イノベーションの宝庫とも言うべきIT産業なのに、免許取得のために既得権益を持つライバルに画期的な技術の中身を全部公開せねばならないので、起業家には新しいアイディアは申請するな、と言う。イノベーションを如何に促進するか、IT産業政策の難しい所である。
ファイル共有や強制許諾制度、著作権や知的財産所有権の問題、電波開放、サイバー侵害、等など実に多岐に亘って話題が尽きない。
興味深いのは、インターネットの発展により、益々直接民主主義的な傾向が促進され、それが、民主主義実現に良いことなのか、と重大な問題を提起していること。
IT革命をバブルで片付ける傾向が強いが、人類社会に途轍もない変革を起こしているのだと教えてくれる良書である。
しかしながら、テレコム・メルトダウンというが、日本の場合主要な電気通信事業者で破綻したところはない以上、既に過去の議論になっていると思う。規制や大企業による秩序を重んじるエリ・ノームと自由と利用者を重んじるローレンス・レッシグという全く立場の違う人物を並べていることなど無理がある。法律家のエプスタイン氏の議論は何がいいたいのかよく分からなかった。
あえていえば、政策というものが、本来意図したとおりの成果をもたらすことは稀だということがよく分かるという位しか、学んだところはなかった。
この手の本を読んで、米国の議論に学ぼうなどと思ってはいけないと思う。
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