高橋久美子脱退(加えて福岡晃子のコンバート)の変化がどこに出るかと言えば、まず単純にドラムが変わることと、基本的にベースが不在になるということ。
そしてもうひとつ重要なのが、久美子独特の歌詞の世界観が途絶えてしまうことだ。ベスト盤を聴いても分かるように、これまでシングルや代表曲を数多く担ってきたチャットモンチーの顔とも言える作詞家としての高橋久美子の脱退もまた、チャットモンチーにとって大きな変化だと言える。
だが、敢えてこれを転機と捉えるなら、これまで主にチャットモンチーの影を照らしてきた橋本絵莉子の歌詞の世界が表面化していくのではないかという期待だ。ポップさのなかにギラリと光る牙。ここ数作ではアルバムの重要な核としてブレないスタンスを守り続けてきたが、そのディープな部分が前に出れば、チャットモンチーはさらにロックバンドとして成熟していける気がする。
そしてこの「テルマエ・ロマン」はその期待に添うような快作だ。タイアップの書き下ろしとはいえ、シングル表題でこのセンス、恐れ入る。風呂場での肉体的・精神的な解放を歌いながらも、葛藤の渦中にある心境を覗かせる後ろ向き加減も実にらしい。
間奏の十数えるくだりにしても、湯船に浸かって数えてる慣例から来ているのだろうけど、およそリラックスムードではない。むしろ切迫感のほうが強いくらいだ。そもそも普通「いーち、にーい」って数えると思うか、カウントダウン方式って(笑)
そういうところもいちいち好きだ。
決意表明のような「満月に吠えろ」と共に、新生チャットモンチーの反撃、いや、快進撃が始まった。試練を乗り越え新たな道を切り開いた二人体制での新作アルバム、大いに期待しておこうと思う。