痴呆禍により荒廃した地球を蹂躙しようと跋扈する謎の陰謀者の魔手に対抗するテラナーの活躍を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第255巻。本巻の執筆者は、久々の新人登場ヴルチェクとベテラン健在フォルツです。地球の嘗ての大都市テラニア・シティは痴呆化し盗賊となった人類が掠奪と破壊の限りを尽くし荒廃の一途をたどっていた。
『テラニアの盗賊』エルンスト・ヴルチェク著:免疫者のアーロンは盗賊団の頭目となったが、実は彼の心に呼び掛ける声の命ずるままに操られ破壊を繰り広げていた。一方、地球を防衛する情報局長官デイトンは銀河通訳のステーマーを呼び寄せ、盗賊団の黒幕の発見と排除という困難な任務を命じる。『追放者』ウィリアム・フォルツ著:大群の手掛りを追って宇宙の偵察を続ける旗艦《グッド・ホープ2》が大群から離れて単独行動を取る奇妙な皿状構造物を発見する。ローダンはカピンの断片を宿す仮面の男アラスカとテレパスのフェルマー・ロイドらをスペース・ジェットで偵察に派遣する。
本書カバー左側に描かれた迫力のイラストの正体は円盤内部の要塞の支配種族で二本足歩行する昆虫生物の‘凌駕する声のクァルショット’です。如何にも著者フォルツが好みそうなSFチックなネーミングだと思います。本巻の翻訳者、五十嵐洋氏のあとがきは、二本立ての話題です。本書に初登場の新人作家ヴルチェクを、二十年前に刊行されたハヤカワSF文庫‘銀河の奇蹟’シリーズで松谷健二氏が書かれた著者紹介を引用し、自身でも補足して解説されます。後半では氏の恩師である作家の光瀬龍先生が本年一九九九年の七月七日に亡くなられた事に触れられ、先生が在りし日に大変お世話になった思い出のエピソードの数々を語り、つきなみな言葉だが、ご冥福をお祈りすると結ばれています。