コッポラの白黒映画と言えば83年の「ランブルフィッシュ」が思い出される。今回もパートカラーで兄の回想シーンが挿入されている。
そして彼が長年追求してきた「父と息子」「兄と弟」の葛藤という、プライベートでありながら普遍的なテーマが過去の作品群を思い起こさせる。
また、前作の「胡蝶の夢」同様、これまでのコッポラのキャリアに対するオマージュ的な撮影手法がふんだんに盛り込まれている。
壁に映る影が語る表現主義、ライトや鏡を使った幻想的効果、兄の不可解な行動や表情に見る恐怖や心理的サスペンス…観客を不安にさせ、謎を呼ぶイメージにどぎつい色のショッキングな回想シーンが加わる。
ただ、デジタル撮影のためかモノクロ画面は非常に鮮明で、クラシカルな深い陰影を出すにはフィルムの方がよかったかも。
それでも、人気のないブエノスアイレスの路上に主人公がたたずむ、いかにも映画が始まるというオープニングからワクワクさせられる。
出演者も、脇役も含めてすばらしいの一言である。久しぶりにクラウス・マリア・ブランダウアーを見たが、むかしと変わらず強烈な印象だったなあ。
そういえば当初はマット・ディロンが兄役候補だったとか。ギャロももちろんよかったが、実現していればコッポラが好きな人にはたまらない配役だったろう。
それにしても「ゴッドファーザー」や「地獄の黙示録」の監督作品の上映機会がこれほど少ないとは、日本の映画界の貧弱さもつくづく嘆かわしい。