前作『アーユーテディ?』は、雑貨屋を開くことを夢見る25歳の和子の目になぜか飛び込んできたあみぐるみのクマ、そこに宿っていた殉職刑事のおじさんの霊が、和子を雇いあげて、自分が命を落とした事件を洗い直し、解決する、という長編でした。
そのラストで昇天したかと思われたのもつかのま、おじさん刑事、天野康雄はまたまたあみぐるみ(今度はカエル)に宿って、和子のもとへ戻ってきました。どうやら、三途の川が混み合っていて、ポイント稼ぎのために返されたらしく、ふたたびコンビ結成に。
今回は四つの短編連作から成っており、巻頭第一話は、和子のバイト先の友人で、手芸作家を目指す少女が、盗作を疑われた事件を、康雄の指示で解決、お礼に作ってもらった「ミル太二号」で、康雄はふたたびクマに転生。和子とともに、テディ探偵事務所開設となり、ネット上での立ち上げに。
そのあとの三話はどれも家族がテーマで、土地のたちのきをめぐる幽霊騒動、和子の母から持ち込まれた、少年雑誌がご町内の各家庭に投げ込まれる謎、最後は、康雄の娘が友達の飛び降りに巻き込まれる、少しせつない事件です。
今回は前作でざっとコメディタッチで紹介された和子、康雄双方の家族の思いがきちんと書き込まれ、意外な素顔にほろりとさせられるとともに、オカルトマニアの二枚目刑事冬野も相変わらずとんちんかんな活躍を見せ、キャラクタードラマがじっくりと楽しめます。
和子とテディ康雄の、世代差のある会話もおかしく、「アイアワレムってスピリチュアル用語ですか」と和子がつっこんだりしますが、お互いの息もだんだん合ってくるなか、康雄の娘、杏が危地に立たされたときには、愛犬の頭にくくりつけられたテディが飛びこみ、そのとき彼が叫んだ言葉だけは、なぜか娘に聞こえたり、と、ドラマティックな場面もあちこちに。
微妙に『チャンネル・ファンタズモ』の心霊世界もかすりつつ、少し哀しいユーモアとオカルトと、暑苦しいおやじ刑事の真情にいつもほだされてしまう和子の心根に引き込まれて、今回も一気に読みました。
四つの事件でかかわったひとたちの厚意で、ラストでは、ネット上ではなく、ついに現実の雑貨屋兼探偵事務所を開業。シリーズとしての第三作に期待が高まります。