書店に行くと目につくのは、平積みされた株関係の書籍。多くは、いかに株で儲けるか、あるいは儲かったかという内容だ。つい1冊購入し、お金持ちに・・・ということを夢想してしまいそうだ。
ただ、本書の筆者はこう断言する。「投資で億万長者になることは『邯鄲の夢』である」。そして、付和雷同の投資家、「金魚のフン」(株式市場では「ちょうちん」と言う)を戒める。
日本の大学で学ぶとき困るのは、これを読んで、理解すれば一応XX学の基礎を学んだという教科書が少ない点だ。
米国では教科書と呼ばれるテキストが存在する。一番有名だったのは、1970年にノーベル経済学賞を受賞したポール・サミュエルソンが著した「経済学」だろう。サミュエルソンは、経済理論を厳密な数字を駆使して体系化したことで学問上の名誉を得、「経済学」で富を得たといわれる。同時に、経済学を学ぶ学生にとって、教科書という基準を与えてくれた。
本書は、まさしく日本証券市場と証券投資の「教科書」を目指して執筆されたものだ。
日本生命での実務経験、また旧通産省への出向、シンクタンクでの金融分野の研究といった、「実証」と「理論」を熟知している著者ならではの端的、明確な視点、考えが貫かれている。本書のコラムは、その最たるものと言える。是非コラムだけでも読まれることをお薦めしたい。
筆者は日本証券市場と証券投資の「基本」を知ることで、「少なくとも大損せず、夕食のおかずを一品増やす生活を送れる」と述べている。
ここで、経済学者ジョーン・ロビンソンが語った有名な言葉を思いだそう。「経済学を学ぶ目的は、経済の問題に対して一連の出来合いの答えを得るためでなく、どうしたら経済学者に騙されないかを学ぶことである」。
投資をするのなら、騙されないように基本を学ぼう。本書は、その目的に合致した書籍である。